駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第5試合・ライト級10回戦/○高瀬司[大阪帝拳](判定3−0)中川知則[進光]●

高瀬は5勝(3KO)無敗で日本ライト級9位。高校時代にインターハイ・ベスト8など50勝以上を挙げ06年9月にデビュー。当初は戦意の低いタイ人相手が続いたが、3戦目、巴山宏和[正拳]、安達寿彦[岐阜ヨコゼキ]と地力の問われる試合を連勝し、07年10月にデビュー5戦目にして日本ランカー・高山剛志[ハラダ]に挑戦。これを判定で制してスピード出世を果たした。
対する中川は15勝(4KO)6敗4分。99年にデビュー、2勝無敗1分で臨んだ00年の新人王戦では初戦敗退に終わり、デビューから9戦を4回戦に費やすという長い下積みを強いられたが、6回戦に上がるや連勝でA級へ。昇格緒戦こそドローに終わるが、その後は02〜03年に破竹の5連勝。04年5月には本望信人[角海老宝石・引退]が保持していた日本王座にも挑戦したが、これは判定負け。再起後は3連勝の後に遠征で手痛い1敗を喫するなど紆余曲折を経た後に、06年からはOPBF戦線に照準を合わせる。東洋ランカーに連勝して07年4月にはランディ・スイコとのタイトルマッチに漕ぎ着けたが健闘空しく敗退。ノーランカーとなって、今回の再起戦を迎えた。
1R。中川はアウトボックスで高瀬の攻めを捌きつつ右ショートで先制。ジャブは少なかったが、高瀬の粗い攻めに助けられてマイペースを守る。高瀬はスピード劣勢が祟って調子がまだ出ない。
2R。高瀬は圧力かけつつのワン・ツーでヒット狙う。カウンターを狙う姿勢も窺わせるが、手数少なく強引な印象も。中川もアウトボクシングに徹し切れず、ステップワークもジャブも上手く使えない。
3R。共に単発のワン・ツー狙いでリードジャブの少ない打撃戦。中川は密着しつつ強引に手数を出すが、高瀬が前に出ながら強引に手数を出してアグレッシブさをアピール。
4R。高瀬の積極性と中川の淡白さが好対照になり始めた。クリンチの多い展開の中で高瀬がやや強引に攻めて強打浴びせるシーンが目立つ。中川は軽打中心スタイルだが見栄えが良くない。
5R。高瀬の攻勢が目立つ。明確なヒットこそ少ないが、強打を浴びせかける姿勢は見た目の印象が良い。中川は守勢の印象が強く、攻めても相撃ちに持ち込まれてヒット数で上回る事が出来ないでいる。
6R。攻める高瀬、迎撃する中川という構図。中川が高瀬の見せる一瞬の隙を目ざとく突いてジャブ、ストレートを度々ヒットさせるが、ダメージを与えられない。高瀬はアグレッシブな反撃で互角に持ち込む。
7R。中川がロングレンジからヒット&アウェイ策で主導権奪取。左フックを連続ヒットさせて見せ場を作るが、様子見する時間も長くて決定的なチャンスは作れない。高瀬はラウンド序盤からクリンチに頼るなど、体力切れの兆候らしきものも。
8R。クリンチ多く膠着気味。運動量の多い中川だが消極性も目立つ。高瀬に相撃ちでヒットを許してしまう流れは覆せず、アドバンテージを作れない。逆に終了ゴング前、高瀬はロープに詰める攻勢でジャッジにアピール。
9R。距離噛み合わず膠着気味。高瀬が先手でアグレッシブに攻めてゆくが、中川も足を使った動きの中でワン・ツーをヒット。高瀬はラウンド終盤にガス欠で動き落ちるが、劣勢に陥る直前で踏み止まっている。
10R。クリンチしつつの殴り合いからスタートしたが、高瀬は明らかにスタミナ切れ。クリンチ、ローブローと露骨な態度で印象が悪い。しかし中川もこの好機に攻め切れず苦しい展開。密着しつつのフックで1ポイントは確保したようだが……
公式判定は坂本98-93、原田97-95、宮崎96-94の3−0で高瀬。駒木の採点は「A」96-94高瀬優勢「B」98-97中川優勢。高瀬のいささか粗過ぎる強打攻勢か、中川の非力で消極的ながら精度あるアウトボクシングのどちらを採るか悩ましいラウンドが続いた。5点差は少々意外だが、高瀬の“アグレッシブ”優勢で一貫した見方なら有り得るスコアでもある。
高瀬が力み激しく、スタミナ切れで失速する苦闘を強いられたが、攻めの姿勢とパワーの差でジャッジの支持を集めた。内容的にもアドバンテージは小差で、相手が元ランカーとはいえ、現役ランカー相応の実力を発揮するには至らず。このままでは西日本ノーランカーの強豪からこぞって標的にされてしまいそう。
中川はヒット&アウェイで詰め寄ったが、消極性とパンチ力不足が祟ってポイント争いに敗れた。気力の低い東洋人相手と同じような試合をしていては、攻勢点重視の西日本では勝てない。せめて手数がもう少し出ていれば、なのだが。