駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第8試合・ウェルター級10回戦/●大崎丈二[ウォズ](判定1−2)二見広信[北陸イシマル]○

大崎は12勝(7KO)3敗2分の戦績でOPBFのSライト級8位。03年にデビュー。04年にライト級で新人王戦に挑むも西日本2回戦で敗退。しかし翌05年はSライト級にクラスを上げて再挑戦し、4KOを含む5連勝で全日本制覇を達成する。だがA級に昇格して迎えた06年シーズンでは、緒戦こそ判定勝ちを収めたものの、当時ノーランカーだった西尾彰人[姫路木下]に際どい内容ながら連敗。再起後は東洋ランカーを降し、敵地・中立地で連続KO勝ちするなど徐々に上向きながら、未だ復調途上の段階か。
二見は7勝(2KO)3敗1分。04年デビュー、05年にウェルター級中日本新人王となるが、西部日本地区との対抗戦で敗退。だが同年末の再起戦で4勝目を挙げてB級昇格、翌06年の3戦でB級もクリアした。07年は5月に初の8回戦で元・日本ランカー桑名竜一[トヤマ]にKO負けした後、11月に6回戦ボーイをTKOに沈めて再起。今回は敵地遠征・格上挑戦という厳しいマッチメイクで2度目の8回戦出場となる。
1R。ミドル〜ロングレンジで様子見から断続的にジャブや連打の交換。二見が先手で手数を浴びせ、ヒット数でも先行。大崎は終了ゴング前にロープ際でボディ連打するが……
2R。大崎がジリジリと圧力をかけてゆくが、距離が噛み合わずヒット数乏しい展開。後半から二見がアグレッシブに迎撃して手数重ねる。攻勢点と手数、“アグレッシブ”要素を構成する2つのファクターが並立して互角の内容。
3R。大崎の右が開始ゴング直後から炸裂。右ストレート上下、右フックで有効打、ヒット。二見もラウンド後半から粘り強く抵抗して五分に渡り合うが、前半の失地が大きい。
4R。大崎は右ストレートをヒットするや、無意識か癖か、距離を詰めて密着してしまうが、ここは二見のテリトリー。二見の反撃は概ねガードの上で決定打には繋がらないが、大崎はヒットが単発気味になって点数を稼ぎ辛くなっている。
5R。二見が近距離からショートアッパー中心にヒットを稼いで、ロープに詰めて大攻勢。大崎は右ストレートで挽回図るが、このラウンドは不発が目立つ。
6R。大崎が圧力かけてゆくが、距離がズレて右ストレートの不発ばかりが目立つ。二見は大崎の苦手な距離からショートアッパーを突き上げて手数と主導権支配をアピール。際どい形勢だが……
7R。大崎は右を当てたいが、密着して右ストレートを打とうとするのは無茶。距離とリズムを掴んだ二見は打ち合いでも優勢に立ち、ロープへ押し込んでショートアッパー連打でヤマ場を作った。
8R。このラウンドも二見のペース。大崎も時折見せ場を作るが受身。ラウンド中盤、お互い同時に左を出すと力エネルギーの悪戯で両者尻餅を突くダブルノックダウン。再開後、二見が攻勢に出て終了ゴング前には右ストレートをクリーンヒット。
9R。密着中心で膠着戦。大崎は左アッパーのクリーンヒットで意地を見せるが、二見も粘り強い攻めで手数とヒット数を稼ぎ、互角の内容に。
10R。二見が最後に選んだ戦術は手数攻勢。数の力でポイントをもぎ取ろうとするが、大崎は苦しい展開の中で右を迎撃。二見はその後も攻勢に出てアグレッシブさを主張したが、ラウンド終盤、大崎が起死回生の左ボディクリーンヒット。二見はダウン、TKO寸前の大ダメージで苦悶し棒立ち。しかし大崎が手負いの二見を仕留めるには時間が足りなかった。
公式判定は宮崎96-94、半田96-95(以上、二見支持)、大黒96-94(大崎支持)のスプリットで二見が殊勲の勝利。駒木の採点は、大崎がTKO寸前の大差優勢を築いた10Rを「10-8大崎」で固定して「A」95-94大崎優勢「B」97-96二見優勢。
メインで突然の大波乱勃発。二見がクロスレンジ戦で持ち味を出して殊勲の東洋ランカー撃破に成功。今日は地力よりも、得意の距離に勝手に入ってくれた相手との相性が大きな勝因という気もするが、A級初勝利としては快挙と言っていい。
大崎は右に頼り過ぎ、距離に無頓着であり過ぎた印象が。最悪のパターンに自覚薄いままハマリ込んでしまい、出て来れなかった。最後の最後でボディブローでTKO寸前まで追い込んだが、無慈悲な終了ゴングに阻まれて涙を呑んだ。