駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第9試合・Lフライ級契約ウェイト(106ポンド)10回戦/○高山勝成[真正](9R3分08秒KO)マーティング・キラキル[比国]●

高山は20勝(8KO)3敗の戦績で、WBAミニマム級2位、WBC同級7位。00年にエディタウンゼントジムからデビュー、01年の新人王戦では西日本予選から6連勝で全日本Lフライ級新人王となる。02年も3連勝してデビュー10連勝を達成し、堂々と畠山昌人[協栄札幌赤坂・引退]の日本Lフライ級王座に挑戦するが、これに失敗して初の敗北。この後Gツダジムに移籍して再び4連勝すると、05年4月には、試合中の事故でイーグル・デーンジュンラバンからイサック・ブストスの手に渡っていたWBCミニマム級王座に挑戦して小差判定勝利で世界王者に。この王座はすぐさま傷の癒えたイーグルに敗れて失陥するも、06年には再起2戦目で小熊坂諭[新日本木村]が長年保持していた日本タイトルを奪取して地力の確かさを証明した。
その後は新井田豊[横浜光]のWBA王座への挑戦が決定するが、新井田の負傷に伴い、カルロス・メロとの暫定王座決定戦に臨み、これに勝利して「暫定」ながらWBA・WBC二冠制覇に成功している。明けて07年、満を持して新井田とのWBA王座統一戦に臨むが、際どい判定で敗れて暫定王座から転落。この試合では所属ジムとの金銭トラブルも発生して移籍騒動も発生。結局は新設された真正ジムへの移籍となり、10月の復帰戦を判定勝ちして再出発。今年1月には久々のKO勝利を飾って好調を持続している。
キラキルは9勝(1KO)3敗1分の戦績で比国ミニマム級4位。boxrecでも全試合の戦績が辿れない無名の存在。今回が初来日である。
1R。いかにも高山の試合、というような両者アグレッシブな打撃戦。キラキルは左のストレート、フックが重く、被弾の際には一瞬ヒヤッとさせられる。だが高山はスピード優位を活かしたソツの無い試合運びで主導権を確保したまま手数で明確なリード。
2R。このラウンドも手数多し。キラキルの左が鋭く高山が度々被弾するも、卓越したパンチの取捨選択とタイミングの良さでヒット数・手数・主導権支配でリード。左フックと右ストレートでグラつかせてダメージ量でもアピール。
3R。高山は軽快なステップで自分のペースを作り、自在のコンビネーションで軽打中心ながらヒット・手数の山。右ストレート、左上下フックなどで印象的なヒットも奪う。
4R。キラキルはアグレッシブにアッパー中心の連打攻勢。だが高山はボディワークでこれを捌きつつ、一瞬の余裕が生じるたびにボディブローを繰り出して手数を稼ぎ、更には好機と見るやすかさず右ストレート、ショートフック、左上下フックと自在・多彩な攻撃を見舞って圧倒的優勢。
5R。高山の一方的な優勢へ。キラキルの攻撃を素早いボディワークで捌いてはショートブローをまとめてヒットを量産。キラキルは少々根負け気味。
6R。キラキルは手数こそ多いが、高山のボディワークとパーリングの前にヒットは左数発のみ。逆に高山は連打を次々と打ち込んで大差優勢。一本調子な所、ダメージを蓄積した頃にはラウンド終了直前という決定力不足が気掛かりだが、何とかTKOを勝ち取ろうとロープに詰めて猛攻も試みる。
7R。高山は守備→反撃のシークエンスを繰り返しつつ、右ストレートを主体にした攻撃で有効打、クリーンヒットを奪う。終了ゴング前には左フックを交えて猛攻に出て、あわやという所まで追い詰める。世界狙う者かくあるべしというような理詰めの攻めが光る。
8R。完全にペースを掴んだ高山は、キラキルの動きに対応しつつ自在の攻めで着実にリードを広げる。終了ゴング直前に強打で効かせると、そこから左右のクリーンヒットを連発してKO寸前に追い込んだ。
9R。キラキルは依然としてアグレッシブだが、高山は巧みにキラキルの攻勢をいなしては、右中心にヒット・有効打連発。終了ゴング直前、コーナーに詰めてのボディブロー連打でキラキルの戦意を奪い、ついにノックダウン。キラキルは戦う意志と挫けた心を相半ばさせたような鈍い動きで立とうとしたが10カウントが数えられた。
高山が元世界王者に相応しい高度な技術を見せ付けて完勝。問題は決定力だけだが、これは無いものねだりか。攻守の技術の粋は文字通りの世界レベル。今日の相手の水準ではお話にならない。世界王者になって、そこから陥落してから全盛期を迎える選手も実に珍しい。今すぐにでも世界ランカー戦を見てみたいが……