駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第7試合・Lフライ級契約ウェイト(107ポンド)10回戦/○武市晃輔[金沢](判定3−0)ロレン・デル・カスティーリョ[比国]●

武市は7勝(3KO)1敗の戦績。04年に東日本のドリームジムからデビュー、05年にはミニマム級で新人王戦にエントリーし、東日本新人王タイトルを獲得(全日本決勝は実施されず)。06年8月のA級緒戦ではいきなり元OPBF王者・山口真吾[渡嘉敷]に挑戦するが、8R判定負け。その後は長期ブランクを経て西日本へ移籍。今年1月の再起戦はタイ国ランカー相手に1RKO勝ちを飾った。
対するカスティーリョは16勝(8KO)5敗1分。現在OPBFミニマム級4位、比国同級1位のランキングを保持している。04年デビュー、この年に9試合というハードスケジュールをこなすなど、キャリアの割に豊富な実戦経験を持つ。8勝1敗。05年の初来日では本日のメイン登場の高山勝成に8R負傷判定負けも善戦健闘、06年の2度目の来日でも和賀寿和[畑中]を8R負傷判定まで苦しめた。06年4月にはWBCユース戦で現世界王者・オーレイドンに挑戦(12R判定負け)、07年10月には比国王座に挑戦もしている(3R負傷ドロー)が、ここまでタイトルに恵まれてはいない。
1R。カスティーリョはアグレッシブに手数を振るうが、初来日時の無鉄砲さは見られず、スタミナ温存を意識した手堅い立ち回り。武市の手堅いガードで明確なヒットは僅か。その武市は手数では見劣ったが、ハンドスピード鋭くヒット奪い、インパクトある反撃を披露した。
2R。カスティーリョはここでもジャブ、ワン・ツー基本の正攻法。対する武市は有り余るスピードを大胆に駆使したステップワークから、トリッキーなタイミングから右中心の強打狙いに出る。カウンター気味右ストレートでノックダウンも。ただ、再開後はケレンが有り過ぎる攻めで不発が目立つ。
3R。武市はステップを使い、ヒット&アウェイで速いジャブ中心にヒットを重ねる。カスティーリョはラウンド序盤こそロープに詰めてボディへ連打を決めたが、その後は攻めてが無くなり、終盤には焦りか苛立ちか、「ブレイク」指示後に反則打を見舞って一発で減点1のペナルティ。
4R。武市がアグレッシブに左ボディ、アッパー、右ストレートと自在の攻めを展開。絶対的なスピードの差で優勢を築く。攻め疲れか、一時は完全に専守防衛に陥るが、再びボディ攻めで優勢を確実とし、カスティーリョの攻撃も堅実にガードした。
5R。武市はこのラウンドもアグレッシブ。しかし、攻め疲れが出たか、またも専守防衛で亀になるシーンが目立つ。時折左右スイッチしながら攻める小技も披露するが、カスティーリョの真っ直ぐな馬力に押される。終了ゴング前に武市は連打見舞って挽回するが、どこまで?
6R。このラウンドも武市はスピード活かした単発ヒットを連発。守る際は徹底した専守防衛で印象損ねるのが気になるが……。ただ、この3分間は武市が攻めている時間が長かった。
7R。ジャブの差し合い中心に、淡々とした内容のラウンド。武市がスピードで主導権を支配し手数も先手だが、カスティーリョも手数をまとめて対抗した。
8R。カスティーリョはボディに手数を集めるが、武市のスピード鈍らず、逆に右ボディで効かせてリードを確保。カスティーリョのパンチは一本調子でガードの上を叩く事で納得してしまっているよう。
9R。武市はまたも専守防衛気味。ガードは手堅いが、カスティーリョの手数を全て受け止めてしまい“アグレッシブ”要素で劣勢。衰えぬハンドスピードで反撃もしてみるが、形勢は微妙。
10R。武市は、カスティーリョのボディ攻めに苦しんだり、手数を浴びてまたまた専守防衛に陥るシーンもあって劣勢否めず。しかし判定勝ち確実と見てのクルージングか、反撃の態度も淡白。カスティーリョも何とか逆転KOを狙う気持ちに欠けており、未だ試合前半かと思うような、手堅さが先行する大人しい内容で終わってしまった。
公式判定は野田97-92、宮崎97-92、坂本97-93の3−0で武市。駒木の採点は「A」97-91「B」98-94で武市優勢。
武市は卓抜した手足のスピードで、東洋の強豪ランカーを翻弄。安易に専守防衛に回ったり、ジャブを打った後にガードが下がる悪癖、更にボディを打たれた時の嫌がり方の判り易さなど課題は残っているが、それらの欠点を補って余りあるのがずば抜けたスピード。現在でも日本・東洋ランカーとして相応しい実力を持っている。
カスティーリョは以前の荒々しさが消え、キャリア相応の落ち着きも出て来た。ただ、攻撃面はパンチが精度確実ではあるものの、一本調子にガードを叩き続けるのみ。悪い意味でも“大人”になってしまったという事か。