駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第11試合・バンタム級10回戦/○川端賢樹[姫路木下](6R0分49秒TKO)橋口竣[正拳]●

川端は26勝(16KO)8敗2分。元日本Sフライ級王者で、現在は日本バンタム級3位。92年デビュー、新人王戦には参加せず地元姫路での活動に専念し、7連勝でA級昇格。昇級緒戦は岡山遠征で初黒星となるが、96年から99年3月まで2引分を挟んで8連勝をマーク(A級トーナメントドロー敗者扱い含む)。だが99年から01年にかけては、東京遠征での連敗、グァム遠征、タイ国遠征でのWBC世界王座挑戦失敗、坂田健史との日本フライ級王座決定戦敗退など波乱に富んだ戦歴を経る中で一時はセミリタイヤ状態にも。02年から漸く復調し、03年にはプロスパー松浦[国際・引退]から日本Sフライ級王座を獲得。ローブローと審判の誤審騒動からダイレクトリマッチとなった初防衛戦も勝利した。しかし04年6月に王座陥落、以後バンタム級に転向したが、格下からの勝利と日本王座挑戦失敗(相手はサーシャ・バクティン三谷将之)を繰り返して現在に至る。昨年は3月にタイ人を、10月に日本人ノーランカーを連続KOしてランキングの維持に成功している。その動きからは36歳という年齢を感じさせず、円熟の極みという感すらある。
橋口は7勝(2KO)6敗1分の戦績。05年にデビューするが、この年は未勝利3敗1分に終わる。地力がついて来たのは06年秋ごろで、同年9月から07年2月まで3連勝して漸くB級昇格すると、B級緒戦の1敗を挟んで今年7月、10月と堀江純平[大阪帝拳]に連勝して一気にA級へ。昨年12月の昇格緒戦は橋詰知明[井岡]に完敗したが、今年3月には名古屋遠征で元日本ランカーの森島裕介[岐阜ヨコゼキ]を撃破して8回戦初勝利を挙げている。
1R。橋口はジャブ中心の牽制と右ストレート狙い。川端はこれをガードとステップワークで無難に捌きつつ、右ストレート中心にアッパーも交えて実に的確な反撃を決める。ヒット・有効打数で早くも大差リード。
2R。両者とも前後のステップワーク軽快に、相手のワン・ツーを捌き合う“高速マスボクシング”状態。ラウンド後半から川端が右ストレートを2発程度決めて僅かにリードか。
3R。やや膠着気味でクリンチ多いが、川端は橋口の圧力と手数を慎重に捌きつつ右アッパー、フック、左フックで有効打とヒットを連発。橋口は前、前へ出るが正当な攻撃が伴わず“乱暴な突進”と見做されそう。
4R。クリンチしつつショート連打を打ち合う展開。橋口は密着し圧力かけつつ自分のペースを掴もうとするが、インサイドワークでは川端が数段上。巧みに頭の位置を変え、タイミング良い反撃でいつの間にか川端がヒットの山を築きあげ、完全に主導権を確保。
5R。橋口はプッシング気味のラフな試合運びだが、川端は体力温存か手数を控えて力を貯め、2分間は積極的に動かず。だがラウンド終盤には右アッパーから連打を見舞って、橋口の足元を危うくさせる。あっという間に形勢挽回し、このラウンドも川端が奪取。
6R。橋口の愚直な圧力に対し、川端は余裕綽々で捌いて、狙い澄ました右アッパーでノックダウン。再開後は冷静に、それでも激しいラッシュで畳み掛けると、またも橋口の足元は覚束なくなってしまう。決着は時間の問題かと思われた所で橋口のセコンドがタオルを投入。これでTKOの決着となった。
川端がインサイドワーク勝負を挑んできた怖いもの知らずの若者に手厳しいレッスンを施し完勝。的確な右ストレートとアッパーによる攻めは緻密な理詰めで、今日は完璧な試合のまとめ方だった。これで格下相手ながら3連続KO。現タイトルホルダーは強豪揃いで2階級制覇の見通しは現状厳しいが、37歳の定年後も特例措置による現役続行が可能なのだから、このまま地力を維持して好機を待って欲しいもの。
橋口はクロスレンジで圧力をかけ、ラフプレイも交えて攻め立てたが、キャリアと実力の伴ったこの日の相手には全く通用せず。攻撃の威力と精度の差がリカバー不可能なほど大きかった。