駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第2部第9試合・Sウェルター級8回戦/○野中悠樹[尼崎](判定3−0)如月紗那[六島]●

野中は14勝(5KO)7敗2分のサウスポーで、現在Sウェルター級のOPBF13位、日本3位。99年デビュー、01年・02年と新人王戦にエントリーするが、少人数のトーナメントを勝ち抜くに至らず、4回戦時代は勝率5割近辺をうろつく平凡な戦績に終始した。しかし03年に6回戦を2勝1分でクリアし、A級でも2勝1敗ペースでキャリアを積み、日本ランキングも上位に進出。07年10月にはランク下位ながらもOPBFスーパーウェルター級王座決定戦に出場する幸運に恵まれ、日高和彦[新日本木村]相手にダウンを奪う大健闘を見せたが判定負け。今回が再起戦である。
如月は6勝(2KO)4敗3分の戦績。03年にデビュー、この年を1勝1敗1分として翌04年の新人王戦ではウェルター級で西日本決勝まで進出。この決勝をドロー敗者扱いで退けられた後、6回戦で初勝利まで1年以上要する足踏みを強いられるが、06年に連勝でA級へ昇格。しかし同年秋の昇格緒戦に敗れ、07年2月のレブ・サンティリャン戦では健闘するも拳骨折の重傷を負って1年のブランクを作ってしまうなど不運に苛まれる。しかし今年3月に日本ランカー・田島秀哲[西遠]を判定で降す殊勲で再起即ランキング入りを果たした。今回は休む間もなくランキング上位を目指してのチャレンジマッチ。
1R。野中はフェイント多用し、如月の出鼻を挫く強打攻め。概ねはガードの上への攻撃ながら、まずは野中が僅かにリード。如月もフックを不完全な当たりながら決めて食い下がる。
2R。このラウンドも野中は強打中心。ガードの上に力強くパワーパンチを集める。一方の如月は空振りも多いが、豊富に手数を放ち右を再三ヒットして小差優勢か。
3R。野中はガードされるも構わず先手で重い手数振るう事に専念。ボディストレートなどでヒットも奪ってゆく。如月の反撃はボディワークで捌かれて不発気味だったが、終了ゴング前の畳掛けで見せ場作りに成功。
4R。野中は足を使いつつ、先手で左右使い分けた手数攻勢。ガードの上が大半だが、如月を防戦に追い込む。如月も時折連打をまとめるが、ガードに専念しすぎた感。
5R。如月が手数を増やして乱打戦模様へ。野中はこの手数攻めを捌いて反撃するが、ここは如月の勢いを持て余す。ラウンド後半になって距離を取った野中が巻き返すも、3分間通じての形勢は微妙。
6R。ショートレンジ打撃戦。序盤は如月が先手も、野中は次第に手数を増やして上下へ打ち分けて形勢挽回。アッパーでガードを割り、ショルダーアタックを使った老獪な攻めも繰り出した。
7R。乱打戦模様。軽打で確実にヒットする如月か、重量感あるパンチをガードの上から浴びせかける野中かで採点の難しいラウンド。共に持ち味を出した形だが、手数で上回る野中の攻勢が目立つ展開。
8R。乱打戦。リーチとインサイドワークで勝る野中のペース。数的優勢をキープしたまま、如月の手数をソツなくガードして凌ぎ切った。
公式判定は坂本79-74、野田78-74、北村78-76の3−0で野中。駒木の採点は「A」77-75「B」79-77で野中優勢。
野中が体格、パワー、経験の相対的優位を存分に活かして判定勝ち。相手の堅守に阻まれてKOのチャンスは無かったが、上位ランカーらしい、渋太く容易に勝機を掴ませない試合のまとめ方。闘病中の家族の前で会心の勝利をメイクしてみせた。
如月は持ち味の鉄壁ガードを主体に戦ったが、先手を取られて手数不足に陥り、更にはパンチ力の差をジャッジに再確認されるような形に。このクラス相応に、自分の実力を発揮するだけでなく相手の実力を出させない、欠点を浮き彫りにするような技術が求められているという事なのだろう。