駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第10試合・Sウェルター級契約ウェイト(67.2kg)8回戦/△チャールズ・ベラミー[八王子中屋](判定1−1)細川貴之[六島]△

ベラミーは7勝(4KO)1敗の戦績で、現在日本ウェルター級4位。米軍横須賀基地勤務のため来日後、日本人女性と結婚して定住。現在は英会話学校講師として働きながら活動を続けているという異色の輸入選手である。来日後にボクシングを本格的に始め、アマチュアで7戦7勝、全日本社会人タイトルを獲得してB級でプロデビューした。06年5月、前回の和歌山興行で今回の相手・細川に判定勝ちし、以来破竹の6連勝。7戦目の加藤壮二郎[協栄]との一戦に敗れて一息入れたが、今年も3月に方波見吉隆[伴流]にTKO勝ちして再起に成功している。クラトキジムとはアマチュア時代に深い親交があり、プロデビュー戦や今回の試合出場はプライベートな縁によって実現したものだろう。
細川は11勝(2KO)6敗2分のサウスポー。02年末にデビュー。04年までは一時負け越し、新人王戦でも2年連続緒戦敗退で4勝3敗の平凡な成績だったが、05年、3度目の挑戦となる新人王トーナメントではウェルター級にエントリーし破竹の5連勝で西軍代表となる。しかし全日本決勝では渡部信宣(=牛若丸あきべぇ)[協栄]に敗れて日本ランク入りを逃す。06年には今回の相手・ベラミーに敗れるなど再起に2度失敗、3度目の正直で勝利を収めてエントリーした07年度B級トーナメントでも微妙なドロー敗者扱い。新人王戦の後、日本人相手の勝ちに恵まれていない状況が長く続いたが、今年3月の高江良昌[久留米櫛間]戦で大差判定勝ちし、悪いジンクスを打ち破った。今回は2年越しのリベンジマッチ。雪辱を果たすと同時に日本ランクの獲得も狙う。
1R。細川はバックステップでベラミーの圧力をいなしつつ、ジャブ・ストレート中心に威力軽めながら手数とヒット数を稼ぐ。ベラミーはジリジリと圧力かけるがスピードの劣勢は明らかで鈍重な印象も。
2R。細川はタイミングをズラしたりフェイントを使ったりと、リズムを絶えず変えつつワン・ツー、左アッパーなどを打ち込んで主導権。ベラミーはジリジリとした圧力をかけ、ボディで細川を嫌がらせるが、手数不足著しい。
3R。細川は勝ちに徹した試合振り。ベラミーにパンチを出させず、自分だけ軽打中心にストレート、アッパー中心に手数とヒットを重ねてポイントアウトを狙う。クリンチワークも使って、ベラミーを塩漬けにする。
4R。細川の、距離とタイミングを意識した慎重な攻め方が支配的。特にアッパーのタイミングが良い。だがベラミーも圧力かけ続け、終盤にはついに捕まえて強引に強打を浴びせる。このヒットで圧力攻勢が“アグレッシブ”要素を満たす攻めとなり、採点も微妙に。
5R。ベラミーが右で先制。細川は動き絶やさず主導権を守ろうと懸命だが、ラウンド後半入ると、ベラミーにロープ際で捕捉されて右ストレートやボディ連打を浴びてたちまち劣勢。拳と体のパワーが違い過ぎる。
6R。このラウンドも前半は細川が必死のアウトボクシングでポイントアウトを狙うが、ベラミーは右ストレートでダメージを与え、更にロープ際へ押し込んでゆく。“クリーンヒット”要素と“アグレッシブ”要素の優勢は歴然。
7R。細川は体力切れを起こしながらも必死の立ち回りで数的優位を守る。しかしベラミーも圧力絶やさず細川を追回し、パワーパンチで細川の体にダメージを刻み込んでゆく。採点要素上は際どいが……
8R。終始動き回ったツケでステップが鈍った細川は、ベラミーの圧力を持て余し始める。インサイドワークの限りを尽くして凌ごうとするが、ベラミーの右1発でグラつき、このラウンドもポイントを失う。ベラミーは勝ちを確実にするにはKOしかなかったが、そこまでは追い込めず。
公式判定は原田78-75(ベラミー支持)、宮崎78-75(細川支持)、半田76-76の三者三様ドロー。駒木の採点は「A」76-76「B」77-77でいずれもイーブン。
パワーとパンチ力のベラミー、スピードと主導権支配の細川。全く異なる採点要素をアピールする、いかにも採点が割れそうな両者の対戦は、2年前と同じく接戦に。前半はスピードの差でベラミーを撹乱した細川だったが、緊張状態で休まず動き続ける戦法が災いしてペースダウン。後半戦のポイントを丸ままベラミーに奪われて、前半の貯金を吐き出した。細川はパンチ力で劣る以上、止むを得ない戦術のチョイスなのだが、勝負処での失速は悔いが残るだろう。ベラミーは、現状のスタイルでは日本ランクは守れてもベルトを巻くには厳しそう。スピードの根本的な欠如をカバーするにはパンチ力だけでなく、試合を作るテクニックも必要。