駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第7試合・Sフェザー級8回戦/●岩下幸右[Gツダ](判定0−2)武本在樹[千里馬神戸]○

岩下は7勝(3KO)7敗1分の戦績。04年デビュー、4回戦時代から勝率五分前後を右往左往する状況も、新人時代に敗れた相手には日高慎一[尼崎]、武本康樹[千里馬神戸]など後のA級上位選手の名前も。06年のB級昇格後もアウェイ中心の不利な条件での試合が続いた事もあって勝率は伸び悩んだが、07年4月には06年度全日本新人王・清水秀人[木更津GB]を敵地で破る殊勲を挙げて漸くのA級昇格を果たしたが。だが昇格後も地元興行で敗れたかと思えば、08年4月には他ジム興行でキャリア上位の選手を破るなど、勝率そのままの浮き沈み激しい星取表となっている。
武本は22勝(12KO)7敗2分の戦績。97年にデビュー、4回戦は難なくクリアするも、6回戦で連敗、A級昇格後もノンタイトル10回戦で連敗を喫するなど、01年までは勝率5割強の平凡な成績に甘んじる。しかし02年からは連勝街道を驀進。04年4月には当時世界ランカーのサオヒン・シリタイコンドー[タイ国]を微妙な判定ながら破ってランキングを奪取するなど急上昇。しかし05年4月には榎洋之[角海老宝石]が保持していた日本タイトル挑戦で、試合中に眼窩底骨折を負うアクシデントもあって判定負けで快進撃はストップ。その後は日本ランクをキープしながらタイ人相手中心の慎重な調整を続けていたが、06年11月に当時ノーランカーの児島芳生[明石]に負傷判定負けする痛恨の取りこぼし。それでも07年3月にWBAラテン王者のファン・ヘラルド・カブレラ負傷判定勝ちして世界ランクに復帰。同年8月にはクリス・ジョンの保持するWBA世界フェザー級王座に挑戦した(9RTKO負け)。一時は引退をほのめかしていたが間もなく復帰し、08年3月には三度世界ランカーに挑戦するが苦戦のドロー。6月には今回のカードで仕切り直しする予定が、試合前の健康診断をクリア出来ない大アクシデントで欠場と、今一つ波に乗り切れていない現状である。
1R。武本はアグレッシブに前へ出て、コンパクトなフック中心の攻めからストレート狙い。岩下はミドルレンジかワン・ツー中心にて数を稼ぐ。共にダメージブローに乏しく接戦。
2R。武本はラウンド序盤にボディブロー中心にヒットを稼ぐ。岩下は中盤から右ショートで反撃して一旦形勢挽回するが、武本はここから右ショートやフックでヒットを稼いで再び突き放した。
3R。岩下の強引な右が度々当たるが、武本も細かく手数を返し、スピードある動きで主導権をアピール。ほぼ互角の流れだがヒット数では僅かに岩下。
4R。岩下が先手で右ボディ、右ショート中心にヒットを重ねて主導権確保。武本も左ジャブを起点にショートフック連打を見せるが、これは空転気味。手数争いは互角で採点の難しいラウンドが続く。
5R。武本が右アッパー起点のショート連打でヒットを連発し、大差先制。しかし岩下もクロスレンジで圧力をかけつつ、手数を重ねて食い下がる。ラウンド後半には膠着気味となり、ここは武本が逃げ切りか。
6R。やや距離開いた。岩下が圧力かけつつ手数振るって追い回す。武本も迎え撃つ形でラウンド後半から追い上げるが、共に決手欠けて僅差。
7R。岩下が強引に圧力、手数。武本はショートで迎撃も、単発気味。明確なヒットに乏しい内容で、クリンチも増えて膠着戦。武本が攻めあぐんでいる様子が目立つ。
8R。岩下がアグレッシブに手数攻め。右の軽打が良く当たっている。武本はクリンチに絡め取られてなかなか強打が出せない。ラウンド終盤、ようやく打ち合いに出たが、ここもクリーンヒット無く微妙な内容に。
公式判定は宮崎77-75、半田77-76、野田77-77の2−0で武本。駒木の採点は「A」77-75岩下優勢「B」78-78イーブン。両者ダメージブローに乏しい微差のラウンドが多く、ドロー近辺ならどちらが勝ちでもおかしくない内容の試合。
武本がクリーンヒット乏しく煮え切らない内容に終始しつつも、格の差で主導権を支配し、辛くも逃げ切った形。明確に獲ったラウンド数は上だが、“アグレッシブ”要素では劣勢の時間が長く、採点要素上は際どい大苦戦だった。
岩下は自分なりの試合振りで大健闘も、ダメージブローに乏しくあと1ラウンドがもぎ取れなかった。待ちに待った大魚を逃がしたという形。