駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第3試合・日本Sウェルター級王座決定戦10回戦/●《日本SW級1位》古川明裕[ワールド日立](8R2分36秒TKO)野中悠樹[尼崎]《同級2位》○

古川は12勝(9KO)1敗1分で、日本Sウェルター級、OPBFで1位のトップコンテンダー。03年にデビュー、3連勝で臨んだ05年の新人王戦では、翌年の全日本覇者・淵上誠[八王子中屋]や現日本ランカーの田島秀哲[天熊丸木→西遠]を破って全日本新人王に。更にそこから引分挟んで3連勝、07年4月には湯場忠志[都城レオS]が保持していた日本ウェルター級王座に挑戦したが、これは1RKO負け。その後はベスト重量のSウェルター級に復帰して3連勝、ランキングを最上位まで上げて今回の王座決定戦出場を果たした。
野中は15勝(5KO)7敗2分のサウスポーで、現在Sウェルター級のOPBF4位、日本2位。99年デビュー、01年・02年と新人王戦にエントリーするが、少人数のトーナメントを勝ち抜くに至らず、4回戦時代は勝率5割近辺をうろつく平凡な戦績に終始した。しかし03年に6回戦を2勝1分でクリアし、A級でも2勝1敗ペースでキャリアを積み、日本ランキングも上位に進出。07年10月にはランク下位ながらもOPBFスーパーウェルター級王座決定戦に出場する幸運に恵まれ、日高和彦[新日本木村]相手に判定負けするもダウンを奪う大健闘を見せた。今年5月には日本ランカー・如月紗那[六島]相手に再起成功し、日本ランクも上げてチャンスを掴んだ。三十路を迎え、これが最後のチャンスという覚悟で臨む2度目のタイトルマッチである。
1R。古川は頭を低くした姿勢から一発狙い。野中はスピード優位を利して、細かく出入りしつつ左ストレート、アッパーでヒットを量産。打ち合いではスウェーが間に合わず2発強打を被弾してしまうが、大事に至らずリードは確保。
2R。野中ペース。ミドルレンジでワン・ツー、左ストレート、そしてクロスレンジでは左アッパーと公立的な攻めで戦果を挙げる。古川もラウンド終盤、強引に左フックを浴びせるが、相撃ち以外にヒットを奪う場面が少ない。
3R。野中の左が機能し主導権。左ショートが決まった瞬間、おもわず古川が両手をキャンバスに着けてしまいダウンの裁定に。だが、ここで勝ち気に逸った野中は追い討ちの途中で反撃をしたたかに浴びて冷や汗の場面も。古川は右左のショートを次々浴びて聴いてしまうが、それでも相変わらず強打は力強い。
4R。愚直に突進する古川、これを捌きながらジャブと左ショートを打ち込む野中の主導権。古川も右フックで野中を一瞬グラつかせて“クリーンヒット”の観点では互角以上も、ヘディングやクリンチも多くて「乱暴な突進」とされないかどうか気掛かり。
5R。野中は体力切れか動きにキレが無くなり、古川の圧力を持て余し気味に。膠着戦の中、古川までスタミナ切れを起こし、プッシングやショルダーアタックなどラフな攻撃も目立つ。それでも野中は着実にヒットを連発し、主導権争いでも優位。
6R。泥仕合に突入。クリンチが目立つ展開の中、細かくヒットを稼ぐのは野中の方。古川はバテが目立つが、それでも強打は健在で予断を許さない。小差の内容だが、古川はマウスピースを吐き出すなど苦しそう。
7R。消耗戦の様相。足を使いつつ軽打で捌く野中、手数が減って一発強打攻勢で逆転機を窺う古川。採点が難しいラウンドになった。
8R。野中が古川の突進を捌きつつ、コツコツとショートを浴びせて主導権確保。2Rに右目尻を切っている古川の顔面には出血が目立ち、目の腫れも酷い。最後は野中がクリーンヒットを決めると、古川は仁王立ちのような姿勢で力尽きた。
野中がスピードとテクニックのアドバンテージを活かし、試合前半を完全に支配。中盤戦以降は体力切れも目立ったが、それまでに与えたダメージがモノを言った。消耗戦を完勝で制した辺りは評価出来るが、日本王者に相応しいパフォーマンスを追求するのはこれから。
古川は終始一発狙いのラフファイト。しかし体力、スピード、テクニックは日本1位とは思えないほど未熟なもので、スタミナ切れも深刻。せめてスタミナをどうにかしないと、なかなか活動は難しそう。