駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第8試合・バンタム級10回戦/●村井勇希[Gツダ](判定0−3)ジェロッピ瑞山[千里馬神戸]○

村井は13勝(3KO)12敗4分の戦績。現在は陥落しているが元日本ランカーで、00年フライ級西日本新人王でもある。98年デビューだが、本格的な活動開始は地区新人王タイトルを獲得した00年から。B級以降は勝ち負けを繰り返し、なかなか連勝が持続しない不安定なタイプ故に出世は遅れがちだが、A級中堅レベルの相手には分の良い星勘定で、04年から05年にかけては日本ランクにも名を連ねている。06年からは積極的にタイ国遠征を敢行、敵地での格上挑戦は結果に繋がらなかったが心身の成長は着実に進み、07年8月の安田幹男[六島]戦は敗れるも会場大喝采・マニア激賞の熱戦だった。前回は今年6月、格下のタイ人に手こずりながら判定勝ちを収めて、星勘定を勝ち越しに持ち込んでいる。
ジェロッピは17勝(8KO)1敗2分の戦績で、OPBFランキングにSフライ級4位。05年4月にデビュー。14ヶ月で10戦、デビュー戦の負傷判定を除いて9連勝をマーク。続く比国タイトルマッチで初敗北を喫し、07年2月には敵地・南アフリカで現WBCバンタム級1位のブシ・マリンガが保持していたWBCインター王座に挑戦し、惜しくもドローに終わる。その後は長谷川穂積のスパーリング・パートナーを務めた縁で千里馬神戸ジムに長期滞在。現在は輸入ボクサー扱いで千里馬神戸所属となっている。来日以来、難波拓人[明石]、川口裕[Gツダ]、松元雄大[Gツダ]、西正隼[正拳]と西日本の若手A級選手への4連勝を含む負け無しの6連勝。前回9月は中日本の負け越し選手を2Rで片付けて格の差を見せ付けた。
1R。牽制の時間が長いが、ジリジリ圧力かけて主導権を握ったのはジェロッピ。ラウンド後半に入ってから左ジャブ→右ボディストレートを5回、6回と捻じ込んで明確なリードを固めた。
2R。このラウンドも様子見の時間が長い。村井はジャブを打つが、これをガードされてしまい攻めの起点が作れない。ジェロッピも大人しいが、時折右を決めて会場をどよめかせる。
3R。ジェロッピが距離とペースを支配して主導権を確保。村井の初弾を捌いてはワン・ツー、右ストレート→左フック、右ボディフックなどで戦果を挙げる。村井は何もさせてもらえない。
4R。村井はややアグレッシブにジャブを放つが、これは単発。ジェロッピは連打で手数を稼いでポイントアウト狙い。ラウンド終盤に漸く村井はアグレッシブな連打攻勢を見せたが、ジェロッピはボディワークも老獪。
5R。村井は攻めの起点を作りたいが、ジェロッピの攻めを捌くのに手一杯。時折ジャブを当て、打ち終わり狙いでフックを放つが不発。ジェロッピは的確な動きで攻勢点と主導権、更にはヒットと手数で小差ずつリード。
6R。駆け引きに勝るジェロッピのペースが続く。ほぼ終始先手で手数と攻勢点を稼いでポイントアウト。村井も右を当てて一矢報いるが、逆に右やワン・ツーの有効打を浴びてしまい劣勢否めず。
7R。このラウンドもジェロッピペース。自分のリズムを完璧に掴んで、村井に打たせず先手。打ち終わりを狙われてもスウェーで巧みに捌いた。村井もゴング前に猛攻に出たが、全て躱されてしまった。
8R。ジェロッピの主導権支配が続く。手数稼ぎ中心でクリーンヒットは少ないが、着実なリードを確保。村井はショートレンジ戦を挑むが、距離とタイミングを見失っており、ここでもジェロッピのペースが揺るがない。
9R。ジェロッピは手数を極端に減らし、体力温存のクルージングか。村井はこの隙に漸くワン・ツー中心の攻勢でヒット。しかし要所はジェロッピもボディワーク巧みに被弾を許さず、貯金1ポイントと引き換えに体力回復を果たした。
10R。村井が先制狙うも、ジェロッピは余裕の捌き。ラウンド中盤にジャブ連打でヒットを稼ぐと、後は村井の誘いにも乗らずに捌きに専念。村井のラッシュは老獪な時間潰しの前に効果を挙げられなかった。
公式判定は宮崎98-92、原田97-94、半田97-95の3−0でジェロッピ。駒木の採点は「A」98-92「B」99-94でジェロッピ優勢。
ジェロッピのインサイドワーク全開。ダメージブロー不足でポイント小差のジャッジもいたが、相手に余力を残させたまま完封する玄人好みするボクシングで完勝。西日本ボクシング界では随一とも言えるテクニシャン振りを披露してくれた。物足りないパンチ力故に大物感
は無いが、OPBFタイトルマッチも見てみたい。
村井は駆け引きに負けて手を出すに出せず完敗。攻めているように見えて攻めさせられているような感じで、相手の掌の上で踊らされているような、不完全燃焼の10ラウンズだった。