駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第8試合・フライ級契約ウェイト(50.0Kg)10回戦/○宮崎亮[井岡](9R0分51秒負傷判定3−0)山田卓哉[真正]●

宮崎は6勝(3KO)無敗2分で現在OPBFミニマム級12位、日本Lフライ級12位。アマ時代にインターハイのタイトルを獲得し、06年末にプロデビュー。タイ人相手に2戦こなした後、07年4月に元西日本新人王戦準Vの須田康博[八尾]と6回戦を戦い、ダウンを喫するも逆転判定勝ち。6月に分の良い負傷ドローを挟んで、10月には初の8回戦で橋本泰治[尼崎]に勝利。08年に入っては1月にタイ人ノーランカーにまたダウンを喫するポカもありつつ2RKO勝ち、しかし2月の赤木啓祐[倉敷守安]戦は負傷ドローの不完全燃焼、6月にはタイ人東洋ランカーに勝利するも消極的な相手を攻め切れず大凡戦を演じてしまうなど、メインイベンターとしては落第点の内容が続いている。
山田は8勝(2KO)2敗3分。04年にエディタウンゼントジムからデビュー。2連勝して臨んだ翌05年度の新人王戦では、同年の西日本覇者となる山脇正輝[大阪帝拳]の前に敗退。この年は再起に2度失敗するなど不振が目立ったが、翌06年に4連勝。ジム移籍などの混乱の中で1年2ヶ月のブランクを作るが、07年末に移籍&再起してからはここまで6回戦2勝、8回戦・10回戦でも勝って、現在4連勝中。前回8月の試合では、久々のKO勝ちをマークした。
1R。山田が先手で仕掛けるところ、宮崎はクリンチで受け止めてショートアッパー。膠着気味の展開でクリーンヒットは無いが、山田の攻勢点をどう評価するか。頭がぶつかるシーンが多く、早くも不穏な空気が漂う。
2R。山田が圧力をかけ、宮崎が迎撃する展開。山田はフェイントも使うが、やや強引か。宮崎のショートフック、アッパーも当たるシーン目立ち、終了ゴング前には右のクリーンヒットでハッキリとリード。
3R。山田の強引な圧力攻勢。ヒットは少ないが、手数と攻勢点でリード。しかし、宮崎も渋太く喰らい付いて、隙あらば右で有効打を重ねてゆく。ジャッジ的には際どいラウンド。
4R。ほぼ全ての時間帯で山田が攻勢。終始アグレッシブに攻めて手数を稼ぐ。宮崎はホールディングやラビットパンチが目立ち、ラフな印象。右の有効打1発決めるが、これをどこまで評価するか。
5R。山田の圧力がこのラウンドも強い。だが宮崎もショートで迎撃して際どい形勢で推移。ところが終了ゴング前、宮崎のショート連打で、山田はコーナーポスト際で大きく態勢を崩し、ロープダウンのジャッジ。
6R。泥仕合ムード。ここでも山田が圧力、手数。ヒットも稼ぐが、ラウンド終盤にはやや疲れた。宮崎もアッパー連打でヒットを重ねて互角に持ち込む。ここまでに山田はパンチによる受傷で両側の目尻と左頬から出血。見た目は深刻な傷に映るが、山田の所属ジム連勝記録も懸かる試合だけにレフェリーも止め辛いか。
7R。やや圧力弱まった山田に対し、宮崎はステップを多用して体力をアピール。ヒット数でも散発的なガラリードして有利な展開。いよいよ山田は体力切れか。
8R。山田は頭から突っ込んで手数出すが、宮崎のショート連打を浴びて効く場面もあり消耗目立つ。バッティングとパンチで顔面も大きく腫れて痛々しい。しかし山田は勝利への執念を見せ、レフェリーも止めるに止められない。
9R。山田が圧力をかけて懸命のアタックも、完全に変形した顔面を見て宮崎主審は「バッティングによる腫れで試合続行不可能」の判断。勝敗は負傷判定に委ねられた。
9Rまでの採点で争われた公式判定は原田90-80、野田90-82、大黒87-84で宮崎。駒木の採点は「A」86-84「B」89-85で宮崎優勢。山田の明確なヒットを伴わない強引な圧力手数攻勢を“アグレッシブ”要素の優位として認めるかどうかが採点のポイント。これを「乱暴な突進」としてノーカウントにすればフルマークの採点も妥当。
宮崎は相手の圧力攻勢に苦しめられながらも、迎撃作戦でポイントを稼ぎ、後半戦ではスタミナ残存量にモノを言わせて押し切った形。ただ、メインを張る東洋・日本ランカーとしては、もっとテクニカルな戦い方で仕留めて欲しかった。
山田はアグレッシブに攻めたがヒットになかなか繋げ切れず、強引なスタイルにジャッジも辛い点を付けた。足りない部分は気迫でフォローしていたが、それでもパンチ力の差までは埋まらなかった。