駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

OPBF東洋太平洋ライト級タイトルマッチ12回戦/●《王者》ランディ・スイコ[比国](判定1−2)石井一太郎[横浜光]《挑戦者・同級1位》○

日本のファンにも御馴染みの王者・スイコは28勝(14KO)3敗1分の戦績。OPBF王座を保持しながらWBA11位、WBC7位、IBF6位と3団体の世界ランクを保持している。この王座はこれが3度目、しかしSフェザー級で5度防衛の記録がある。
98年デビュー、7KOを含む8連勝をマークし、00年に迎えた9戦目で比国Sフェザー級王座を獲得。ジョー小泉氏のマネージメントを受け、国内での試合も度々披露しながら王座防衛(3回)と連勝を伸ばし、02年には17連勝目でOPBFのSフェザー級王座を獲得。この連勝は04年1月まで21連勝まで伸びたが、22戦目のWBC王座挑戦者決定戦で後にIBF世界Jライト級王者となるムゾンケ・ファナ[南ア]に敗れてストップする。以後、06年にWBAライト級王座挑戦失敗などで敗戦もあったが、東洋圏では無敗を誇り、OPBFの2階級制覇を達成し現在に至る。日本人相手には、無冠時代の99年から数えて6戦5勝無敗1分という戦績で、かつてのジェス・マーカを髣髴とさせる日本人キラー振りを発揮している。
対する挑戦者の石井は20勝(16KO)2敗1分。現在日本ライト級王者であり、OPBFは1位のトップコンテンダー。
01年にデビュー、この年2連勝して翌02年に新人王戦へ挑むが、東日本決勝で涙を呑む。しかしその後は06年まで7連続KOを含む12連勝と立ち直るどころか、一直線に日本ライト級戦線で台頭。07年、長島謙吾[80古河]に挑んだ日本ライト級タイトルマッチは敗れたが、翌08年、その長島が返上した同タイトルを中森宏[平仲BS]相手に2RTKOで奪取。7月に1度防衛し、今回はOPBFに狙いを変えて来た。
1R。石井が右ボディで先制。しかしスイコも圧力強く、明確なヒットではないもののアッパーで轟音を響かせて攻勢点を稼ぐ。石井はラウンド終盤に右ボディを追加してヤマ場作り、このラウンドは互角。
2R。ミドルレンジで牽制が長い。スイコがジリジリと圧力をかけるが、石井はそれに続く強振をボディワークで裁き、逆に右ショートをクリーンヒット。その後も左フックのデコイ(故意の不発)→右のクリーンヒットを決めて2度の見せ場で優勢。
3R。石井はスイコのプレッシャーを、ステップバック中心の捌きでいなして左フックで迎撃し有効打を稼ぐ。ボディを打たれればすぐさまボディを打ち返し、逆にコーナーへ詰めて右一撃決めて優勢。
4R。石井はラウンド序盤から圧力をかけ、ロー気味ながらボディ攻め。レフェリーからローブローの注意を受けたが、今度はロングレンジからスイコを誘っておいて左右の迎撃。ファイタータイプから変貌を遂げた石井の豊かなスピードが発揮されたラウンド。まさに絶好調。
5R。スイコが圧力をかけるが、石井は最早クルージング気味にいなしてゆく。密着戦ではボディブローと手数稼ぎの連打で淡々と優位を築く。ラウンド終盤には狙い済ました左フックをクリーンヒットさせ、ポイント確保に成功。
6R。石井が左で先手を獲るが、ポイント的に追い詰められたスイコはギアチェンジした構成で圧力強打攻め。石井は慎重に捌きながらラウンド終盤には左やボディ連打で見せ場作り対抗。このラウンドも互角近辺に収める。
7R。スイコは攻勢に出たいが、石井のスピードある足捌きを捕まえ切れず、不発弾の山を築いてしまう。石井はローブローで減点1を喫し、やや攻めが粗い感もあったが、終了ゴング前に左ボディ→右左フック連打を決めた。
8R。石井はスピード利してスイコの攻勢を捌いては、打ち終わり狙いに左フック右ストレート左アッパー。ボディも攻めてしつこくロープへ詰めてゆく。スイコは左1発のヒットが精一杯。
9R。石井はこのラウンドも好調持続。右フック→ボディでグラつかせて大チャンスを迎えるが、ここはスイコが必死にクリンチに逃れて凌ぎ、一瞬の隙を突いて右アッパーをクリーンヒットさせポイント争いさえ混沌とさせる。石井は最大の好機で仕留め損なった。
10R。両者体力切れか、運動量が見るからに落ちた。スイコが圧力かけて攻勢点でリードするが、石井は淡々と捌いて凌ぎ、ラウンド終盤には強烈な左を上下1発ずつ決める。
11R。このラウンドも余裕見せた石井だが、スイコが左アッパーでヒット。石井は強引に密着して攻勢点と手数を稼ぐが、右アッパーを有効打されて、ここはやや苦しい展開。
12R。ロングレンジの打撃戦模様だが、スイコのアッパーが先手。石井は強引に圧力かけるが、スイコは右アッパーを当てて優勢。だがスイコも逆転KOには持っていけず、逆に石井の右を2発喰らい、圧力攻めをまともに受けてしまった。
公式判定はボクー[主審・豪州]117-110、熊崎[副審・日本]115-113(以上、石井支持)、エサーリオ[副審・比国]114-113(スイコ支持)のスプリットで石井が王座奪取。駒木の採点は「A」117-110「B」117-113で石井優勢。熊崎副審の採点は際どいラウンドでかなり“遠慮”したスコアリングで、石井の負けは無い試合。比国側副審の採点は、同胞を優遇する典型的なOPBF採点。
石井が難敵を撃破して日本・東洋の2冠達成! スピード優位を前面に押し出し、左フック、右ストレートの2大武器を巧みに使い分け、更にラスト1分にヒットをまとめてジャッジへのアピールを欠かさなかった。才能開花・新境地開拓のベストバウトと言っていいだろう。ただ、残念ながらこのタイトルは、日本タイトルとの平行防衛活動が困難という理由で間もなく返上してしまった。