駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第6試合・日本Sウェルター級タイトルマッチ10回戦/○《王者》野中悠樹[尼崎](判定3−0)音田隆夫[一力]《挑戦者・同級1位》●

王者・野中は16勝(6KO)7敗2分のサウスポーで、現在はOPBFでも2位に在る。99年デビュー、01年・02年と新人王戦にエントリーするが、少人数のトーナメントを勝ち抜くに至らず、4回戦時代は勝率5割近辺をうろつく平凡な戦績に終始した。しかし03年に6回戦を2勝1分でクリアし、A級でも2勝1敗ペースでキャリアを積み、日本ランキングも上位に進出。07年10月にはランク下位ながらもOPBFスーパーウェルター級王座決定戦に出場する幸運に恵まれ、日高和彦[新日本木村]相手に判定負けするもダウンを奪う大健闘を見せた。08年5月には日本ランカー・如月紗那[六島]相手に再起成功し、前回9月の王座決定戦で古川明裕[ワールド日立]を8RTKOに降して念願の戴冠。今回はJBC規定に基く、王座決定戦勝者に課せられた指名挑戦試合だ。
挑戦者・音田は16勝(6KO)7敗2分。ランキングはOPBF6位、日本1位。00年にトクホン真闘ジムからデビュー、この年を連勝し、翌01年には5連勝でウェルター級全日本新人王に輝く。その後も連勝を10まで伸ばすが、11戦目にKO負けして不覚を喫する。その後は2〜3勝して1敗のペースで好調が持続せず、一時はランク圏外にも脱落。タイトル戦線に絡めないままキャリアを重ねていたが、07年後半に一力ジムに移籍してから3連勝、上位ランカーの新井恵一[高崎]を降してランキングも急上昇、このチャンスを勝ち取った。
1R。ロングレンジから野中の左が連続してクリーンヒット。音田は前に出て行くが手足のスピードに大差あって追い詰められない。巻き込み気味の右フックを懸命に届かせるも、野中の左がキレている。終了ゴング前に野中は右アッパー、左ストレートで追い討ち。
2R。このラウンドも野中の左が先手で連続有効打。音田も強引に迫るが、戦果は右1発程度で不発目立つ。野中は距離を取ってからのアッパーで有効打を追加しマイペース。音田は攻防分離に陥って厳しい。
3R。音田が右で強引にアタック敢行も、ヒットは不完全。野中の右フック、左ストレートが明確に決まってゆく。右ボディも決まってヒット数では野中が圧倒した形。
4R。音田の攻勢に迫力欠け、野中の左ストレート、右フックがどんどん突き刺さる。野中はスタミナ配分意識してクリンチワークも使いつつ、主導権確保に懸命。ラウンド終盤には早くもガス欠気配だったが、左でヒットを重ねて格好をつける。
5R。音田の圧力を捌きながら、野中がヒットを稼ぐ。しかしこのラウンドは音田の圧力強打攻勢もしつこく、膠着気味の展開にハマったところで音田が打撃戦を制する場面も。
6R。音田が強い圧力でラッシュ。野中は迎撃しつつも、迫って来られて手を焼いた。しかしラウンド中盤には野中も左クリーンヒットで音田をグラつかせて挽回。音田も次第に消耗激しくなり泥仕合化し、優劣も混沌。
7R。音田が前へ出るが、これを捌く野中が先手で攻める。音田も右ボディで有効打奪うが、野中は要所で左ストレート、ワン・ツーが的確。ラウンド終盤には左ストレートでクリーンヒット連発し、優勢確保。
8R。このラウンドも音田の圧力を捌く野中のラウンド。左右のフックで主導権を握る野中に対し、音田は攻めが雑になり苦しくなってきた。野中はクリンチも効果的に使いながら追加のヒットも奪って理想的な展開に。
9R。ショートレンジ打撃戦。野中が先行するが音田も必死に食い下がる。野中はラウンド中盤からはクリンチ多用し省エネ作戦。音田はスピードの劣勢が響き、離れ際にパンチを貰うことが多い。
10R。野中は足で捌きつつの迎撃。音田の右も当たるが、野中が互角以上の形勢をキープする。クリンチ多用するスタイルはあまり見栄えが良くないが、ラウンド中盤には左4発、右1発の有効打で大勢決した。終盤には野中は敢えて守りを放棄して果敢な攻めを展開、左中心にクリーンヒットを浴びせてリードを大差とした。
公式判定は坂本99-92、原田98-92、宮崎98-92の3−0で野中。駒木の採点は「A」100-90「B」100-92で野中。
野中がスピードと攻守の完成度の高さをそのまま戦況に結び付けて圧勝。形勢際どいラウンドが1〜2流れてフルマークは逃したが、完璧に近い勝利で堂々の初防衛。強いて言えばこの階級らしいKOパンチも欲しい所だが、流石に無いものねだりが過ぎるか。次戦はチャンピオンカーニバルだが早くも安定王者の風格が出て来た。まさに円熟の極み。
音田はタフさを発揮して粘り強く迫ったが、ヒット数でこれだけ圧倒されては苦しい。念願のタイトル初挑戦も、日本王者級とのレベル差は気合と体力だけでは如何ともし難かった。