駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第6試合・Sフェザー級10回戦/○木原和正[ウォズ](判定2−1)武本在樹[千里馬神戸]●

木原は9勝(4KO)1敗。05年末デビュー。2戦目が06年10月とブランクを作るが、2戦2勝で迎えた07年の新人王戦では5連勝でSフェザー級西軍代表となり、東日本代表の棄権により不戦勝ながら全日本タイトルと日本ランクを獲得。08年は3月のA級緒戦で大差判定勝利し、その勢いで山崎晃[六島]とのランカー対決に臨んだが、際どいスプリット判定で惜敗。そして9月の「新人王対決」で村澤光[尼崎]に完勝した。編成上の関係で日本ランクからは陥落したが、今回はその復帰も賭けて2度目の格上挑戦に臨む。
武本は23勝(12KO)7敗2分の戦績。OPBFフェザー級8位、日本同級2位のランキング。97年にデビュー、4回戦は難なくクリアするも、6回戦で連敗、A級昇格後もノンタイトル10回戦で連敗を喫するなど、01年までは勝率5割強の平凡な成績に甘んじる。しかし02年からは連勝街道を驀進。04年4月には当時世界ランカーのサオヒン・シリタイコンドー[タイ国]を微妙な判定ながら破ってランキングを奪取するなど急上昇。しかし05年4月には榎洋之[角海老宝石]が保持していた日本タイトル挑戦で、試合中に眼窩底骨折を負うアクシデントもあって判定負けで快進撃はストップ。その後は日本ランクをキープしながらタイ人相手中心の慎重な調整を続けていたが、06年11月に当時ノーランカーの児島芳生[明石]に負傷判定負けする痛恨の取りこぼし。それでも07年3月にWBAラテン王者のファン・ヘラルド・カブレラ負傷判定勝ちして世界ランクに復帰。同年8月にはクリス・ジョンの保持するWBA世界フェザー級王座に挑戦した(9RTKO負け)。一時は引退をほのめかしていたが間もなく復帰し、08年3月には三度世界ランカーに挑戦するが苦戦のドロー。9月に岩下幸右[Gツダ]を判定で降し、今回は再起2戦目。
1R。木原はアグレッシブに手数を出し、足を使いながら主導権を窺うが、パンチはガードの上。武本は手堅い守備、少ない手数ながらも鋭い右で要所を押さえるベテランらしい試合運び。リング中央を支配して主導権でも優位か。
2R。ショートレンジの攻防。木原が手数で先手。正攻法の中にいきなりの右や左フック、右ボディなどで数的優勢。武本はソツなく応戦するも淡白な印象。
3R。木原が間断ない手数攻勢で攻勢点と主導権支配で優位。上下の打ち分けもスムーズで、攻める姿を印象付ける。武本も手堅い試合運びでジャブ、ストレートなどを打ち込むが、インパクトにやや欠けるか。
4R。両者手堅い攻守。ヒット数の少ない展開が続く。木原がスピード優位を利して連打をガードの上ながら打ち込み主導権を窺う。しかし武本は後手に回りつつも時折ジャブ、フックでヒットを稼ぐ。
5R。木原のジャブ、右ボディが冴える。明確なヒットは少ないが、手数で優勢。武本は一発強打狙いで、当たった時の見栄え良いが、肝心のヒット数が少なく微妙。
6R。木原はやはり手数攻勢。これに対して武本はジャブを鋭く決めつつ、チャンスを窺う。そしてラウンド終盤、武本は左フックで木原を効かせ、クリンチに逃げさせた。
7R。武本の左ジャブが単発ながらもヒットし始める。木原は武本の圧力をいなしながら連打を小気味良く打ち込んでいくが、明確なダメージブローに至ったパンチは僅か。1発の威力でも武本の方が見栄えしている。
8R。ここに来て武本が圧力とステップを巧みに組み合わせて、熟練のインサイドワークで主導権を奪取。ジャブを先手で当て、攻勢に出ては右フックで有効打を奪う。木原の手数は、やはり明確なヒットに繋がらない。
9R。武本が圧力かけつつ、左ジャブ起点に右を狙う。しかし木原も右中心にヒットを重ね、ラウンド終盤には相撃ちながらも互角の形勢をアピールする。パワー・ダメージか、手数・ヒット数かでジャッジの見方が分かれそう。
10R。武本の圧力・強打攻勢が試合を支配するが、木原もガードの上でも厭わずに手数を重ねて懸命の攻勢アピール。このラウンドも決め手に欠けてジャッジ泣かせのラウンドに。
公式判定は宮崎96-94、原田96-95(以上、木原支持)、半田97-96(武本支持)のスプリットで木原が殊勲の1勝。駒木の採点は「A」96-94「B」98-97で武本優勢。またしても優劣不明のラウンドが多く採点が非常に難しい試合。武本に振ったラウンドでも最後まで迷ったものがあり、どちらが勝っても本当におかしくない試合だった。ただ、筆者は12列目から観戦したが、リングサイダーには見えてこちらには見えない「武本のガードを割ってヒットした木原の軽打」が多数あったようで、公式採点はこの辺りも考慮された可能性がある。
優劣不明のラウンドが続く、いかにも武本在樹の試合、といった趣の大接戦。しかし木原が運動量多い手数中心の試合運びでポイントを押さえて、日本ランキングをもぎ取って見せた。ガードの意識も高まっており、それが攻撃力を減殺させたという印象もあまり感じない。その才能の完成度は順調に高まっているといえるだろう。
武本は鋭いジャブと単発強打、さらには堅いガードも見せて地力の確かさはキッチリと披露。圧力攻めに転じた後半戦でも互角に応戦していたが、僅かな差に泣いた。試合後、引退を表明したが千里馬神戸ジム側は後に撤回する旨発表している。