駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

アゼリア大正昼夜興行〜第2回森岡栄治杯

西日本地区本年最後の興行は、アゼリア大正でのグリーンボーイ育成試合。よりにもよってキリストの誕生日に血生臭い殴り合いをしなくても……とも思うが、パートナーの異性もいない身にとっては絶好の“退避場所”になってくれて助かったりも(笑)。
この日の興行は、7月末に配布された選手募集要項によるとファイトマネーは全員現金支給とのこと。ボクシングに限らず、ごく一部の選手以外は雀の涙のギャランティで命を賭けなくてはならない格闘技業界だが、こういう機会が少しでも増えてくれればと思う。

第1部概要&雑感

昼の部は、本日デビュー戦または未勝利選手を中心にマッチメイクした「零勝戦」と言われる育成興行で4回戦11試合&6回戦1試合の構成。神戸から大阪までこういうイベントを観に行くのが当然の事になってる自分も大概だなと思う(笑)。とはいえ12試合も3000円で観られるのだから、質はともかく量的には他の娯楽よりも随分と割安ではある。もっとこの辺を潜在的なライト・ボクシングファンにアピールする術は無いものか。
まったく、これほど競技自体の知名度が高い割に「(テレビで)観る事」と「生で見る事」が乖離しているプロスポーツは、ボクシングと大相撲ぐらいだろう。例えば世界戦中継番組内で、有力選手出場試合のチケット特別電話予約でもやればいいのに、残念ながらそういう試みは滅多に見られない。こういう所こそK−1・PRIDEの真似をすべきなのだが……。以前、深夜3時台の女子プロレス中継で、一瞬告知テロップを流しただけで翌日数十件の問い合わせがあった…というぐらいテレビの力は絶大なのだが、ボクシング業界はその辺りの事に無頓着すぎる印象がある。

第1部第5試合・ライト級契約ウェイト(60kg)4回戦/●中島丈志[Gツダ](2R2分36秒TKO)松本和也[明石]○

04年にはSライト級で新人王西日本決勝まで進出した中島だが、長らく低迷を脱せず。最近は練習も不足気味との話も聞く。この日も雑な動きとディフェンス意識の甘さが災いして良い所無くKO負け。勝った松本は既に7敗を喫している選手だが、最近は試合内容の充実が目立つ。このまま精進すれば6回戦までは手が届くだろう。

第2部概要&雑感

第2部も4回戦11試合&6回戦1試合の12試合。ただし、こちらは幾つか勝っている選手が中心のマッチメイクで、新人王予選で健闘した選手の姿もチラホラと。Sウェルター〜ミドル級の試合も複数組まれていて、これなら一見の素人さんでも連れて行けそうなラインナップが揃った。

第2部第3試合・Sフライ級4回戦/○源甲斐幸三[Gツダ](1R1分19秒KO)三浦章吾[神拳阪神]●

デビュー以来5連敗の源甲斐が秒殺KOで嬉しい嬉しい初勝利。まるで『ロッキー』のラストシーンのようにトレーナーと抱き合って、その後も文字通りの狂喜乱舞。先の見通しはどうあれ、これで胸を張って「プロボクサーをやってました」と誇れる人生になる事だろう。おめでとう!
敗れた三浦、フックやアッパーのスピードや威力は4回戦上位クラスも、全くガードを放棄していてボクシングになっていない。右ストレートをクリーンヒットされて敢え無く轟沈。神拳阪神ジムの選手はディフェンスが疎かになり過ぎている選手が実に多いが、この選手もその1人か。

第2部第6試合・Sフェザー級契約ウェイト(58kg)4回戦/●楠章二郎[新日本大阪](判定0−3)高木竜也[八尾]○

1R、楠にフラッシュ気味のダウン1。公式判定は3者とも38-37で高木。駒木の採点は2R以降を楠に振って38-37楠優勢。

第2部第7試合・ミドル級4回戦/●岡本直樹[尼崎亀谷](4R2分07秒TKO)岩尾剛[泉北]○

05年度新人王戦で西日本決勝を戦った岡本の復帰戦。この日デビュー戦の岩尾を相手に地力の差を見せるファイトを展開していたが、様子見が過ぎて度々被弾し、元来の打たれ弱さも相まってKO負けを許してしまった。来年度を展望する上でもこの躓きは痛い。
岩尾は勝ったものの、まだ大振りが多く、レベルの高くないミドル級の4回戦でも並クラスの現状か。この1勝を原動力にどこまで精進を重ねられるか。

第2部第10試合・Sライト級4回戦/●越崎泰広[尼崎亀谷](判定0−3)藤本浩司[八尾]○

公式判定は40-36、39-37、39-37の3−0で藤本。駒木の採点は40-36で藤本優勢。
今年の新人王西日本予選で、後の全日本新人王・大崎丈二とほぼ互角の勝負を繰り広げた剛腕・越崎だが、直前の病気による調整不足が祟ったか全く精彩を欠く試合振りで完敗。攻めてはパンチが粗く、守ってはガードが下がる…という感じで、藤本のアグレッシブな手数攻めの前にポイントを持って行かれた。その藤本は、クリンチやダッキングで巧みに打たれない位置を探るなど、最後まで冷静な戦い振りで2勝目(2敗)となった。

第2部第12試合・Sバンタム級6回戦/○児島芳生[明石](判定3−0)井戸本雅也[大阪帝拳]●

公式判定は3者とも58-56で児島を支持。駒木の採点でも58-56児島優勢。
バンタム級の新人王西日本準優勝者・井戸本の再起戦。序盤は井戸本が上下フックやアッパーなど多彩な攻撃で主導権を窺うが、中盤以降、懸念のスタミナ切れが再発して動きのキレが落ちてしまった。児島は豊富なスタミナに裏付けられた、6回戦相応の実力の持ち主。的確なショートレンジブローで中盤以降のラウンドを制して少差ながら確実なポイントアウト。
今年の新人王バンタム級戦線は全国を通じて低調と思われたが、西日本実力最右翼の井戸本が6回戦で足踏みして、図らずもこれを裏付ける格好に。

興行全体の総括

マッチメイクの方針からして仕方ないが、4回戦にしても低調な内容の試合もチラホラ、そして期待の新人戦上位組が次々と自滅した上に、6〜8回戦級の能力を持った新星も現れずと、やや残念な内容の1日。それでも2部ではKOが連発され、プロボクシングならではの興奮と爽快感は味わえた。プラマイ相殺して及第点といったところか(偉そうな言いようだな^^;;)