駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第10試合・Sライト級5回戦/●石橋正和[六島](1R2分59秒KO)張飛[明石]○

両者戦績は石橋4勝(1KO)2敗、張飛3勝(1KO)4敗。
1R。張飛は足を使いながらボディストレート中心に手数、ヒットを稼いで試合を作る。石橋は圧力をかけて強打を見舞うがスピード不足。終了ゴング直前、張飛が左→右フックでクリーンヒットを奪い、痛烈なノックダウン。石橋は何とか立ち上がるもダメージ色濃く棒立ちで、ゴングと同時に張飛が走りこみながら右ストレートを叩き込むと石橋はまたもやダウン。
際どいタイミングのため、宮崎主審は直ちにジャッジ3氏に意見を聞き(宮崎氏の仕草を見ると、副審の意見は割れているようにも見えた)、インスペクターと協議の上で主審の権限を行使して2度目のダウンもラウンド内であったと認定。2ノックダウンの自動的KOが採用されて試合終了となった。
今回の事例は、1度目のダウンのカウント中に3分間を経過しているようにも思えたが、JBCルール第71条第3項に「カウント中に3分間の規定時間が来ても終了のゴングを鳴らさずカウントを続け、カウント10にいたらないでダウン者が立ち上がったとき、はじめて終了のゴングを鳴らす。その後正味1分間の休憩に入る」と明記されており、カウント終了からゴングが鳴らされるまでの間はラウンド中と扱われる事に何ら問題はない。宮崎主審はルール上許される限り最大限の配慮を行っており、裁定そのものに関しては完全にルールの枠内に収まっている。試合終了タイムはカウントアウトの場合はカウント終了後のタイムとなるが(JBCルール第22章第5項)、自動的KOの場合はその旨明記されていないので、便宜上ラウンド終了の一瞬前という逆算で「2分59秒」と扱われたものと思われる。
ただ今回のケースは、カウント中に3分間が経過していたならばカウント終了後のゴングは主審の「ボックス」の指示と同時に鳴らさなくてはならないはずで、張飛ニュートラルコーナー付近から、反対側のロープ際に経っていた石橋に突進してパンチを放つまでの“長い”間、「2回目の『2分59秒』」が生じたのはおかしい、と見る向きもあるとは思う。それを抜いても現行ルールの盲点とも言うべき事例であるので、JBCも役員会などでこのレアケースについて討議をして頂きたいところである。
さて、試合の総括へ移る。張飛が相対的なスピード優位を活かして主導権を奪い、彼の新たな持ち味とも言うべき威力のメリハリの利いた強打によって豪快なノックアウト勝利に繋げた……という試合。昨年の今頃はまだ3戦未勝利だった選手が気がつけば西日本新人王というのもスゴい話だ。ただ、今期のSライト級戦線は、例年に比べてやや低調な水準だったこともあり、後楽園に向けての展望は未だ明るくないという印象を受けた(後に中日本との対抗戦で敗退)。
石橋は、やはり今回もスピードが余りにも不足していたという印象を受けた。ここまで足が使えないと、いくら本来の技術面で上回っているにしても主導権が手元にやって来ない。