駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第9試合・ミドル級4回戦/○下野喜道[ホワイトフォックス](3R2分18秒負傷判定3−0)小倉雅弘[神拳阪神]●

新人王戦ながら、未勝利同士の対戦。下野は未勝利1敗、小倉は未勝利9敗2分。
1R。小倉は久々に豪快で力の乗ったフックを放ち先制攻撃。しかし下野も密着して小倉の持ち味を殺してフック、アッパーで冷静に反撃。更に動きの落ちた小倉へボディをお見舞い。ヒット数で圧倒した下野が攻勢点でも優位。
2R。下野は正攻法からアッパー、ボディブローでヒットを集めるが、小倉も散発的・オープンブロー気味ながら強振で反撃。強引に圧力をかけて主導権を引き寄せようとするが、下野がクリンチ状態を振りほどくため投げを打ったところ、倒れまいと踏ん張った小倉がヒザを負傷。小倉は足の不安を隠すために体を預けて懸命の粘りも、戦果乏しく下野がヒット数でリード守った。
3R。小倉はここも密着しての単発強打。下野は途中から意識的に距離を開け、小倉が痛めた足でスローに接近するところへ連打を狙い打つ非常な作戦。小倉の膝の状態は悪化の一途で、再三ドクターチェックが行われた挙句に試合ストップ。小倉は泣き顔で無念さを露わにしたが……
ルール上、肩の脱臼など試合中の“自傷事故”はTKO裁定となるが、今回の小倉の負傷は下野のレスリング行為未遂によるもの。悪質な反則なら小倉の反則勝ちとなるが、坂本主審はこの下野のラフプレイを「不可抗力によるもの」と裁定。偶然のバッティング・反則打が原因で試合後半に試合がストップされた際、負傷判定で勝敗を決すると記されたJBCルール第80条1項・ロを適用し、3Rまでの採点により勝敗が争われることになった。
公式判定は宮崎30-27、大黒30-28、野田30-28の3−0で下野。駒木の採点は「A」29-28「B」30-28で下野優勢。
下野が相対的な技術の優位を反映させて判定勝ちとなったが、どうにも後味の悪い勝利になってしまった。内容的に勝ちは揺るがぬ内容も、問題の場面でもし小倉が素直に投げられていれば、反則行為に厳しい坂本主審ならば下野に一発で減点を課した可能性もあった。今日の勝ちは色々な意味で危ういものと言えよう。次戦で是非とも汚名を濯いで欲しい。
小倉は久々に気力充実、豪快なフックを振り回して果敢に戦った。技術不足は相変わらずで、動きそのものも絶好調時に比べるとまだ物足りない所もあったが、今日は最後まで戦わせてあげたかった。これで未勝利のまま10敗となってしまったが、今日の結末ではまだ終われないだろう。まずは焦らず膝の負傷を癒し、改めて初勝利を目指してもらいたい。