駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

Fighting Beat Boxing(ハラダジム主催興行)

恒例のハラダジムが主催する夏興行。今回はジムのエース・上原誠は欠場し、代わって充実著しい高山剛志がタイ国ランカーを相手に初のメインを務める。しかし優良4回戦ボーイが集まり辛いこの時期だというのに、4回戦7試合・6回戦1試合・10回戦(しかもタイ人相手)1試合というラインナップは正直物足りなかった。所属外ジムの選手同士でもいいから、4回戦を1〜2試合減らして6回戦か8回戦をもう1試合組んで欲しかったところ。
まぁそういう事もあって、客入りは平日の夕方という事を差し引いても寂寞感漂う様子に。スポンサーが用意した指定席は埋まっていたものの、ダフ屋が「ご招待」のスタンプを押した立見・自由席のチケットを廉売している有様だった。


なお、手元の採点は「西」(10-9マスト)「東」(10-10あり)を併記するいつものパターンで。

第1試合・Sフェザー級4回戦/○湯川翔太[江坂](1R2分03秒TKO)綾部雅之[進光]●

オープニングマッチは両者デビューの一戦から。
1R。両者ガードを下げた姿勢から捨てパンチ気味のジャブを交錯させる序盤戦。構えやパンチを放つ仕草などはサマになっているが、肝心の当て勘が悪く、一流選手を“気取っている”段階か。互いのガードの低さを突く形でヒットを交換し、KO狙いの強振を躱してクリンチに膠着するのを繰り返す展開がしばらく続いたが、湯川が半クリンチの状態から右ストレートを強引にクリーンヒットさせて効かせると、更に右ストレートを追加してノックダウン。綾部は足がもつれてファイティングポーズを取れず、カウント途中でストップされた。
見事に明暗が分かれる結果となったが、両者の地力そのものは接近しているような印象。共にハンドスピードは見所があるが、精度や当たるパンチの取捨選択などの技術面は目下後発発展途上中といったところ。総合的に言えば4回戦でも平凡で、今後の精進が望まれる。

第2試合・Sバンタム級4回戦/△板倉康友[ハラダ](判定0−1)坂東大輔[進光]△

公式採点は野田39-38(坂東優勢)、宮崎38-38、半田38-38の1−0ドロー。駒木の採点は「西」
板倉は1勝(1KO)2敗1分の戦績で、ちょうど1年前のハラダジム夏興行以来の復帰戦。坂東はこの日がデビュー戦。
坂東はガードを高く固めながら、右ストレート、左フック、ワン・ツーとパワー、スピードを感じる強打を次々と打ち込むが、デビュー戦の緊張からか力みが過ぎて連続性の無い単調な攻撃ばかりで、あからさまなオープンブローも目立つ。
一方の板倉はジャブを起点に、ガードの空いたボディへアッパーを打ち込み、相手の注意が下へ向いたところへ顔面へも強打……という、頭を使った戦いぶりでヒット、有効打を量産。前回で見せたガードの甘さや大振りも改善されており、1年間の進歩に好感が持てる。
試合は板倉がやや力感に欠けるものの明確なヒット数で大差先行し、それを板倉が散発的ながら強烈な有効打で見せ場を作って挽回……という展開に。3R終盤には坂東が突如通り雨のように激しい左右フック乱れ打ちを見せて板倉をグラつかせるシーンがあり、他のラウンドでも板倉を守勢に追い込むシーンもあったが、主導権を握っている時間は板倉が圧倒的に長かった。
公式判定は野田39-38(坂東支持)、宮崎38-38、半田38-38の0−1ドロー。駒木の採点は「西」39-37「東」40-37で板倉を優勢とした。強打と手数・主導権の交換レート次第ではイーブンもあり得る内容ではあったが、ドロー決着とはいえ1票を坂東が獲得したのには少々驚いた。
坂東はハンドスピードやパワーに見所があるが、今日はとにかく肩に力が入り過ぎ。ガードを上げっ放しでボディを狙い打たれ、ディフェンスに専念する度にピンチに陥るなど試合運びの拙さが目立った。今のままでは宝の持ち腐れである。
板倉は攻守の粗い面が無くなり、冷静な上下の打ち分けなど内容的には進歩している。要所要所で被弾する守備勘の甘さが響いてジャッジの心証を損ねたが、内容は五分以上。ややパンチ力に物足りなさは残るが、新人王戦に出場してもおかしくないレベルにはある。

第3試合・Sフェザー級4回戦/●平尾彰敏[ハラダ](4R0分33秒TKO)真木大作[JM加古川]○

平尾は1勝(0KO)2敗の戦績、真木はこの日がデビュー戦。
デビュー戦故か明らかに浮き足立った真木は攻守共にバタバタした動き。1R早々にバランスを崩した所に右ストレートを合わされてキャンバスに手を着けてしまい、不用意なフラッシュダウンを喫する。しかし平尾は相変わらずその後は徐々に冷静さを取り戻し、ワン・ツーや左右フック、そして練習の成果と思しき肩の力の抜けた右アッパー、ストレートで有効打を積み重ねて序盤の失点を挽回していった。
一方の平尾は相変わらずのアグレッシブさで手数攻めに打って出るが、いかんせん「打つ」だけのパンチで精度に欠けるのと、こちらも相変わらず守備面が拙いがために打撃戦になるたび劣勢に立たされ、結局中盤戦以降は手数以外全ての面で不利と言う有様となった。
最後は勢いづいた真木が、打撃戦で優勢に立ってロープに詰めてワン・ツー連打を畳み掛けたところでレフェリーが早めのストップ。採点上は3Rまでで漸く五分で、もう少し様子を見ても不思議ではなかったが、もはや平尾に再逆転の余地なしとの判断か。
真木は先述の通り、序盤は動きの固さが目立ったが尻上がりに調子を上げて嬉しいデビュー戦KO勝利。手足のスピードや攻守の技術面は平凡で課題も多いが、見たところ練習量で素質面の不安をカバーする努力型の選手か。とりあえず次の試合も見てみたい。
平尾は今日も気合が空回り。アグレッシブなのは良い事だが、声がデカいだけの歌のようなもので、手数を振り回すだけではボクシングにならない。当てに行くパンチと、ちゃんと防御として成立しているブロッキングを覚えないと2勝目は遠い。

第4試合・Sバンタム級4回戦/○上村徹[神拳阪神](1R2分14秒KO)伊藤俊[Gツダ]●

上村は6/10に9戦9敗の相手にデビュー戦勝利して1勝(0KO)無敗の戦績。伊藤はこの日がデビュー戦。
1R。両者気合は感じられるも緩慢な動き。上村はガード固めてワン・ツー中心も、ハンドスピード欠けて強引さ目立つ。しかしこの攻勢に対して伊藤は全く対処できず、粗い攻守で反撃の糸口を掴めぬまま劣勢。完全に主導権を我が物にした上村は、ラウンド後半に強打攻勢とカウンター合戦で2度ダウンを奪って自動的KO勝ち。
上村はこれで2連勝。ノックアウトも記録してレコードに箔をつけたが、パフォーマンス的には至って平凡で、この連勝は相手に恵まれた感が強い。今後、相手のレベルが戦績相応なものに上がって来ると苦戦は必至だろう。
敗れた伊藤は、これがデビュー戦ということを差し引いても余りに動きが雑すぎた。ディフェンスの甘さも目立つし、課題山積の現状である。

第5試合・Sフェザー級4回戦/○中川直幸[ハラダ](判定3−0)楠章二郎[新日本大阪]●

中川は3勝(0KO)3敗1分の戦績。昨年度新人王戦では1回戦を突破するも、2回戦で柳井育夫[大鵬]にドロー敗者扱いとなった。今回はその敗退以来1年ぶりの復帰戦。一方の楠は2勝(0KO)4敗2分の戦績。5/3に新人王戦予選で藤本貴一[Gツダ]に敗れてからの再起戦。
両者ベタ足気味でややスピード感に欠ける動き。次第にステップを踏む場面が減り、やがて額が着くぐらいの距離まで接近して重厚な打撃戦へ。楠はジャブ、ワン・ツーから左右のボディブローで手数を浴びせてヒット数先行。互いにスタミナが切れた終盤戦でも上下左右にフックを振るって懸命に戦った。
一方の中川はショートアッパーで楠のガードをこじ開け、ジャブ、ショートフックを浴びせてゆく作戦。3Rには明確な優勢を勝ち取り、他のラウンドでも手数ではほぼ互角。しかし攻めには強引な印象が否めず、ヒット数で見劣りするラウンドも目立った。
公式採点は宮崎39-37、大黒39-37、原田39-38の3−0で中川。駒木の採点は「西」39-37楠優勢「東」39-39イーブン。中川の3Rの優勢と、全般的なアグレッシブさが評価された形だが、この判定は、ヒット数で小差ながら優勢を確保していた楠には少々気の毒。
両者の新人王戦1回戦級の実力と限界を同時に示したような試合内容。中川が手数と攻勢をアピールして際どくジャッジを味方につけたが、スピードと攻撃の精度から言って6回戦では苦戦が予想される。
楠はガード、コンビネーションといった持ち味を活かしたが、肝心な所でスタミナが切れて、相手が苦しんでいる時に同じように苦しんでしまったのが敗因か。これで3連敗、随分と戦績に大きな傷が出来てしまったが、4回戦なら普通に勝ち負けできるレベルだけに、3勝目を目指してこれからも頑張ってもらいたい。

第6試合・Sフェザー級4回戦/○高橋正尚[エディ](判定2−0)谷野陽太[泉北]●

高橋は2勝(1KO)1敗、谷野は1勝(0KO)1敗2分の戦績。高橋は4/16に勝利して以来、谷野は5月に新人王戦1回戦で敗れて以来のリング。
序盤戦から高橋は足を使いながら左ジャブ、フックを打ち込んで行くが、精度が甘く肝心のヒットが奪えない。逆に谷野は左、右のカウンターを合わせて逆襲し、足を使って試合を支配している方が何故か劣勢に陥るという奇妙な展開に。但し谷野のパンチも精度、決定力に欠け、KOを予感させるシーンは皆無。
3Rからは互いに命中率の低いパンチを打ち合う乱打戦となり、手数豊富ながらやはり決定力に欠ける攻防が4Rまで続いた。悪い意味でほぼ互角の形勢だったが、高橋得意の右強打が度々効果的に働いて、有効打数で小差優勢。4R終盤にも有効打を追加して貴重なポイントを確保した。
公式採点は宮崎39-37、半田39-38(以上、高橋支持)原田38-38の2−0で高橋。駒木の採点は「西」39-37高橋優勢「東」39-39イーブン。
高橋はアウトボックスで主導権確保を狙うも、起点のジャブを当てる事が叶わずに自滅気味の苦戦を強いられた。得意の右も後半に入るまで出せず、勝ったものの反省材料ばかりの一戦となった。やはり課題はパンチの精度。
谷野も精度に欠け、「当てよう」という目的意識の乏しい単調な攻めばかりが目立った試合。アグレッシブなのは悪くないが、それだけでは良い結果に繫がって来ない。

第7試合・ライト級4回戦/○中島涼[ハラダ](2R1分50秒KO)末吉勇大[神拳阪神]●

中島は3勝(3KO)3敗の戦績。昨年度の新人王戦はキラー・ショットの左フックで西日本決勝まで進出したが、その決勝で武本康樹[千里馬神戸]に破れ、12月の再起戦でも思わぬ1RTKO負けを喫して2連敗。今回はそれ以来7ヶ月ぶりの再々起戦。対する末吉は03年9月にデビュー戦をKO勝ちして以来、なんと2年10ヶ月ぶりの復帰戦。業界筋からの話ではプロテストを再受験してのカムバックとの事。
1R。中島は左ジャブを意識的に使って相手の隙を探り、そこからキラーの左フックを見舞おうという構想。しかしジャブは次々と突き刺さるも、左フックは相変わらずのメクラ打ちでヒットしない。これに対し、ゴング早々大曲輝斉状態でスタートダッシュをカマすなどテンションの高い末吉は、中島の左フックに右フックでクロスカウンターを奪おうとする危険な作戦。これが決まれば昨年12月の中島×岩下幸右[Gツダ]戦の再現となるところだったが、この狙いは不発に終わる。
2R。このラウンドもクロスカウンター合戦という『あしたのジョー』のような攻防となるが、中島が左ジャブを起点にして着実にヒットとダメージを積み重ね、そこから新兵器となる左→右のコンビネーションフックを炸裂させて、あっという間に2度のダウンを奪って鮮やかなKO勝ちを果たした。
中島は左フックに加え、リズムと手数を稼ぐ左ジャブ、そして左フックから繋げる2つ目のキラー・右フックを身に着けて大きく成長。今後は、メクラ打ちが直らない左よりも、むしろ右フックの方が頼りになるのではないだろうか。これなら6回戦でも通用する目処は立ったが、課題は上げようと思っても上がりきらない左のガード。ハンドスピードのある右を使う相手に出会った場合どう対処するかがカギとなるだろう。
末吉は3年ぶりの試合とは思えぬ気合の入りようで、果敢に右のフック、ストレートでカウンターを奪いに行ったが、結局叶わず玉砕した。自分のペースにハマれば大勝しそうなタイプだが、やや戦い方が強引過ぎる嫌いがあり、現状は自分を傷つける確率の高い諸刃の剣。

第8試合・フライ級6回戦/●久田哲也[ハラダ](判定1−2)山田卓哉[エディ]○

セミファイナルはハラダジムの若手有望株の1人、久田がA級昇格を賭けて戦う6回戦。
その久田は5勝(3KO)2敗の戦績。昨年の新人王戦では激戦のフライ級で西日本準決勝まで進出するも、後の全日本覇者・奈須勇樹[Gツダ]に敗れて敗退。その後、昨年12月、今年4月と連勝を飾っているが、試合内容がやや低調なのが気になるところ。一方の山田は3勝(0KO)2敗2分。もともとはライトフライ級を主戦場に活躍していたが、最近ではフライ級で試合する事が増えている。今回は初の6回戦。
1R。山田が持ち前のアグレッシブさを全開にして手数攻め。左ジャブ→右アッパー、右ストレート→左フックという、変則スイッチとも言えるトリッキーな攻めで主導権を奪った。これに対し久田は、カウンターからボディアッパー中心のショートブローで反撃して食い下がる。
2R。山田の変則的なコンビネーションがこのラウンドも機能。更に左フック、右アッパーなどで細かくヒットを重ねて手数優勢。久田も時折連打やロープに詰めての攻撃を見せるが散発的。
3R。このラウンドも山田は先手、先手のアウトボックス。巧みに相手の距離を外しながら細かい手数や狙い撃ち気味のジャブで中盤まで優勢に運んだ。だが久田は攻めあぐみつつも戦意衰えず、ラウンド終盤に右ストレートをクリーンヒットさせてダウン寸前の場面を作った。山田はかなり効かされていたが懸命にクリンチで粘りこんだ。
4R。山田は前ラウンドの後遺症も少なく、動きに翳りは殆ど見えない。久田の圧力をクリンチ・ステップワークで捌きつつ、細かい手数とヒット数を稼いでゆく。久田も左フックをクリーンヒットさせて見せ場を作るが、3分間で見栄えするシーンが少なく、印象度からすれば微妙。
5R。久田が圧力をかけつつの左強打で有効打を奪って先行。しかし山田もリードジャブで距離を取ると、要所でジャブ、フックをカウンター気味に合わせてヒットを重ね、終わってみれば互角かそれ以上の形勢。久田はスタミナが切れてきた。
6R。最後のラウンドまで冴える山田のインサイドワーク。手数を出しつつ、クリンチ、ステップワーク、ショルダーブロックを駆使して久田にまともな攻撃をさせない。更に左アッパーとワン・ツーでヒット数も確保し、攻撃面でも優勢。久田の見せ場は右ストレート1発のみ。
公式判定は大黒58-57、野田58-57(以上、山田支持)、北村58-57(久田支持)。駒木の採点は「西」59-55「東」59-56でいずれも山田優勢。
山田が細かい手数と渋いインサイドワークで6ラウンドを凌ぎきり、アグレッシブとリング・ジェネラルシップの要素で終始優勢に立った。パワー不足を技術をカバーする、テクニシャンタイプのお手本のような戦いぶりで殊勲の白星を挙げた。スタミナ面の不安も無く、今日の試合振りが再現出来るのならば6回戦でもう1勝できる可能性も十分にある。
久田は自分の持ち味を完全に封殺されて完敗。今日は全く自分の試合をさせてもらえなかった。これまで2試合ほど勝っているのが不思議な程の内容だっただけに、遂に来るべき時が来たかといったところ。6回戦以上で戦うには、もっと試合運びが上手くならなくては厳しい。

第9試合・ライト級10回戦/○高山剛志[ハラダ](判定3−0)ソンコム・ジョッキージム[タイ国]●

メインイベントは、ハラダジムの副将格・高山剛志がタイ人ランカーを相手に初のメインイベントに挑む。
その高山は11勝(3KO)5敗の戦績。97年に東日本地区でデビューし、途中3年のブランクや西日本地区への移籍を経ている。03年度の新人王戦ではSフェザー級で翌年の西軍代表を破り西日本決勝まで進出、B級、A級でも順調に実績を上げており近況の充実も著しいが、日本ランカー級の相手にはこれまで惜敗続きで、今後はこの壁をどう乗り越えるかという事になるのだろう。
対するソンコムはタイ国Sフェザー級4位。PABAタイトルに2度挑戦した経験のある選手だが、過去9回の来日では未勝利8敗1分と、見事な“お仕事”ぶりを見せてくれている。
試合内容は、相変わらず抜群の距離感とフェイントを交えたテクニカルな攻撃を駆使する高山が完全に主導権を掌握。やや消極的なカウンター狙いのボクシングに徹するソンコムに対し、顔面への右フック、ストレートやボディへの左フックを中心とする強打を次々とヒットさせてゆく。
しかし高山は戦意に乏しいタイ人が相手にも関わらず、慎重なヒット&アウェイを淡々と続ける“負けない試合”を実践したため、極めて平坦な展開に。しかも、やがて集中力が途切れたのか攻守が徐々に雑なものとなってゆき、試合は中盤以降急速に大凡戦モードへと突入する。たまに連打が決まってソンコムが効いたそぶりを見せても、ラッシュに行くどころか勝機を勝手に見限って攻勢を自分からリセットさせてしまう始末で、客席のストレスは溜まる一方となった。
緊張感の無い野次が飛び、退席する客も続出するという大変弛緩した空気が会場に充満した中で迎えた最終ラウンドも淡々とした展開に終始。高山はラスト30秒になって漸くKO狙いの大振りに転ずるが、時既に遅し。この試合20回目のゴングが鳴って、もはや結果の明白な判定スコアが読み上げられた。
公式判定は大黒100-90、宮崎100-90、原田100-92で高山のフルマーク。駒木の採点は「西」「東」とも100-90だが、確かに1〜2Rは10-10をつけた方が良かったかも知れない。
高山は持ち前のステップワークとフェイントの健在振りを示しはしたものの、新しい収穫は全く無く、極めて内容の乏しい試合となってしまった。ただでさえ1Rから最終Rまで判を押したように同じような試合内容が続く傾向がある選手なのに、戦意の薄いタイ人相手に何の工夫も無く安全策に終始すれば大凡戦となるのも当然。今日の試合振りは、観客にチケット代金を精神的満足で還元する役目であるメインイベンターとしての自覚に欠けていたと言わざるを得ない。
また今日は、過度の守備優先や折角の攻勢を自らリセットしてしまうという悪癖も露呈し、今後日本ランキング入りを目指すに当たって大きな心配の種を蒔く事になってしまった。こういうディフェンシブな試合を好む選手は、いざ自分の攻撃が通用し難い格上の相手と当たった場合、守勢一方に回らされてズブズブの大差判定負けを喫する可能性が高い。昨年7月のVS磯道鉄平[ウォズ]戦を見る限りでは、格上と当たった時にはそれなりに腹を据えて戦える度胸もあるようなのだが、最近の楽勝続きが影響して“安全策”に溺れるような事があれば、それはかえって危険な作戦となるだろう。

興行全体の総括

微妙なレベルの4回戦が淡々と続き、それが漸くセミ前から盛り上がり始め、第8試合は玄人好みする好試合を見せてくれたのだが、メインが想定外の大凡戦で尻すぼみも良いところの失敗興行となって終わった。勿論最大の責任者は格下相手に淡々とした試合に終始した高山だが、唯一のA級試合がタイ人相手の10回戦というマッチメイクにも問題がある。関係者諸氏の反省を乞う。