駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第1部第5試合・フェザー級8回戦/○上原裕介[大鵬](判定3−0)川野正文[大阪帝拳]●

両者戦績は上原10章(4KO)3敗1分、川野7勝(2KO)3敗1分。上原は昨年来、やや慎重に相手を選びつつも日本人A級ボクサーを相手に負傷ドローを除いて3連勝中。川野は4月に1年数ヶ月ぶりの復帰戦を勝利で飾ってA級昇格を果たした。今回が初の8回戦となる。
1R。距離開けてジャブの打ち合い。川野が軽快なステップで細かくヒットを重ねて主導権争いで優勢に立つが、上原も右ストレート、アッパーなどでヒット奪って手数でも肉薄と互角の展開。
2R。川野がこのラウンドも足使いつつジャブ中心。ガードの上や軽打中心のヒットながら手数と主導権で明らかに優勢。しかし上原はラウンド終了直前に右ストレートをクリーンヒットさせて川野を効かせる痛打。この一発でジャッジ的にはかなり微妙。
3R。上原はアグレッシブさを増してフェイント交えつつ手数豊富な打ち合いに打って出る。川野は足を使いつつチャンスを窺う。左フックで有効打を浴びせあう場面などで見せ場を作った後、ラウンド終盤に上原が右ストレート、左アッパーで有効打重ねて押し切った。
4R。上原は更にアグレッシブ。圧力をかけて強打中心の手数攻めに出て右ストレート中心に左アッパー、フックなどで有効打を含むヒットを重ねる。川野は守勢に回りながらも左カウンターや右ストレート、左フックなどでヒット奪って小差まで挽回する。
5R。川野はスピードで主導権奪回を窺うが、上原の圧力の前に封殺されてしまう。上原はワン・ツー、右ボディ、左アッパーで強引に川野のガードを突き破って優勢。川野はワン・ツー、左カウンターやフックで応戦するが劣勢が否めない。
6R。川野がアグレッシブなアウトボクシングを展開し、ラウンド序盤から中盤まで支配的なゲームメイク。決定力は無いが左ジャブを起点にした攻撃でヒットを量産。しかし上原も粘り強く強打やコンビネーションを浴びせてヒット数で互角以上まで持ち込む。
7R。川野の精度高い左ジャブが効果的に働く。右ストレート、左フックでヒットを重ね、終盤には有効打も連発。上原は左カウンター、右ストレートなど強打中心の狙い撃ちで抵抗するが、パンチで出血するなど苦戦ムードも漂う。
8R。川野のジャブ、ストレート、左フック、アッパーが次々と有効打、クリーンヒットとなって一方的な展開に。上原もワン・ツー、左フックで抵抗したが打ち合いでことごとく負かされ、グロッキー状態にまで追い込まれてしまった。
公式採点は野田77-75、北村77-75、藤田77-76の3−0で上原。駒木の採点は「A」77-75川野「B」78-77上原と“1人スプリットデジション”。採点上はかなりのクロスゲームだったのではないか。
上原は持ち前のパワーを活かして中盤戦を支配したが、終盤には川野のスピードと連打の前に劣勢となり、最後はKO負け寸前の場面も作られてしまった。採点上は序盤の強打攻めがジャッジの心証を良くして小差逃げ切り勝ちも、地元でなければもっと際どいスコアになっていただろう。先述のようにパワフルな強打は安定感があるが、A級選手にしてはスピードに乏しいところがあり、これは永遠の課題と言えそうだ。
川野はスタミナ、スピード十分の試合運びで初の8回戦でも互角以上に健闘した。終盤にはキレのある攻撃も見せたが、中盤まで守勢に回っているように受け取られる場面が多く、折角の手数攻めも“アグレッシブ”の評価に繫がらなかった。横のスピードを縦にも展開させるようにするのが当面の課題か。