駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第4試合・日本Sウェルター級王座決定戦10回戦/○《日本SW級1位》石田順裕[金沢](判定2−0)松元慎介[進光]《同級5位》●

OPBF&ABCOを加えて三冠地域王者として君臨していた日本王者クレイジー・キムが、防衛戦の過密日程を嫌ってこの王座を返上。これに伴って王座決定戦が開催される事となった。しかし出場予定だった松橋拓二[帝拳]が負傷を理由に出場をキャンセルし、代わって5位の松元に挑戦権が巡って来た。結果として「日本王座」の前に「西」を付けたくなるマッチメイクとなったが、来春のチャンピオン・カーニバルが楽しみになるような試合を期待したいところ。
この階級の日本1位、OPBF2位に位置するトップコンテンダー・石田は15勝(5KO)5敗2分の戦績。01年にはこの階級でOPBF王座の獲得経験がある他、昨年にはビー・タイトでも優勝するなど、キムの陰に隠れた存在ながら実力を誇示して来た。この日本王座には3度挑戦していずれも判定負けしており、獲得は長年の悲願でもある。
対する松元はOPBF10位、日本5位のランキングで、ここまで12勝(3KO)3敗1分。03年の新人王戦でウェルター級西軍代表となり、翌年9月に当時の日本ランカー・新屋敷幸春[沖縄WR]に判定勝ちしてランキング入り。それ以来貫いて来た無敗のキャリアは今年7月に日高和彦[新日本木村]にTKO負けして中断したが、今回は東日本のランカーが軒並み出場を辞退した事でチャンスが巡って来た。
なお、この両者は04年4月、松元の新人王戦卒業第1戦でマッチメイクされたが、この時は石田が8R判定勝ちを収めている。
1R。松元は早いジャブを突いてヒット数先行も、当たりは軽い。石田は前進しつつ強打中心に反撃し、散発的ながら左フック、右ストレートを有効打。ロープに詰めての手数攻めも見せて形勢挽回する。
2R。松元はこのラウンドもジャブ攻勢。それに加えて右フックをタイミング良くスマッシュさせリードするが、石田もカウンターでクリーンヒット奪い、右ストレートを追加して際どい形勢に持ち込む。
3R。やや距離が詰まっての打撃戦。松元はショート系のブローで手数を稼ぐが、石田は右ストレート中心に重い有効打でヒット数優勢。この階級らしからぬスピード感ある攻防で、好勝負の気配。
4R。石田がラウンド前半、右ストレートに加えて左ショートフックを機能させてヒット、有効打数でリード。松元も後半には自分の距離を奪い返してジャブ中心の攻勢で失点をリカバー。だが松元の攻撃に決定打が欠けており微妙。
5R。松元がこのラウンドも距離を維持し、左フック、ジャブで石田の動きを封殺。石田も右ストレートなどで反撃を狙うが不発気味。ラウンド終了直前の打ち合いも松元が左右の高速ブローで優勢に渡り合った。
6R。松元のペースが続く。石田が接近するところをワン・ツー、ボディフックの高速コンビネーションで有効打奪う。その後も左ボディ、ワン・ツーでヒットを重ねて打ち合いでも大差。石田ワン・ツーで反撃も、苦し紛れの感が否めず。
7R。石田は左中心の攻めにスイッチ。ジャブの差し合いを優勢に進め、左カウンターでクリーンヒットも奪う。松元もカウンター気味の強打で反撃し、ラウンド後半にはジャブ中心の攻めでビハインドを縮めていった。
8R。松元の左ジャブ中心の攻勢が光る。石田はワン・ツー狙いだが、やはり空転。松元のハンドスピード豊かなジャブ、フック、ストレートが度々有効打となって優勢確かに見えたが……。
9R。石田が左アッパー狙いに転じると、これが見事にハマってヒット数で優勢となり、前半戦を制する形に。ラウンド後半には松元も再び距離を取ってジャブ中心に反撃するが、石田は最終盤にロープへ詰めて攻勢をアピールした。
10R。クリンチの多い膠着戦も、松元が渋太くボディへ手数を叩き込んで優勢に推移。最終盤、石田はロープ際に詰めてラッシュしたが、この短時間でどこまで挽回されたか?
公式判定は原田98-93、北村97-95、大黒95-95の2−0で石田が新王者となり、OPBF王座と併せて5年越しの2冠を達成。駒木の採点は「A」95-95イーブン「B」97-96松元優勢。
強打中心の石田、細かく鋭いジャブ中心の松元と持ち味の違う両者の大熱戦。小差判定ならどちらの勝ちも有りというクロスファイトだったが、微妙な判定に会場からも驚きの声が。公式のジャッジペーパーを見ると、石田の勝ちにつけた原田、北村の両氏は7R以降4つのラウンドで随分と松元に辛い採点が為されており(原田40-36、北村39-37でそれぞれ石田優勢)、こちらとは随分と違う見方が為されていたようである。
石田はパワーと臨機応変の試合運びでいぶし銀のポイントアウト。しかし相手の左ジャブとハンドスピードに苦しめられ、特にスタミナ面では圧倒された形。下馬評を覆される苦戦でもあり、勝ってなお翌年からの防衛戦線に不安を残す結果となった。
松元は左ジャブ中心にヒット数と主導権支配では試合を通じて優勢をキープしたが、この階級では勝ちを確かなものにするために必要である、痛烈なダメージングブローが余りにも少な過ぎた感もある。厳しい採点には同情したくもなるが、二度来る保証の無いチャンスだっただけに、もっと強欲さを試合振りに繋げて欲しくもあった。