駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第1部第8試合・Sフェザー級契約ウェイト(58.0kg)10回戦/●片山博司[アポロ](8R0分27秒負傷判定0−3)佐梁孝志[明石]○

片山は9勝(2KO)1敗1分の戦績。04年のデビュー以来、所属ジム主催興行のみに出場。慎重に相手を選ぶマッチメイク方針により1つの引分を挟んで無敗の8連勝。05年末にB級昇格、06年9月にはA級昇格と順調に出世した。A級では戦意に乏しいタイ人相手に連勝の後、07年9月に児島芳生[明石]相手に初のランキング試合に挑むも小差スプリットで敗れて初黒星。だが07年12月に中川直幸[ハラダ]を判定で降して再起を果たしている。
佐梁は7勝(1KO)9敗1分の戦績。広島三栄ジムから00年にデビュー。新人王戦は2度挑戦するも西部日本予選で敗退。6回戦に上がってからは粟生隆寛[帝拳]や青空西田[新日本徳山]などホープの相手を務める“噛ませ”役に甘んじていたが、ジム移籍も挟みながらも2年半・6戦を費やしてB級脱出に漕ぎ着ける。A級でも昇格緒戦で玉越強平[千里馬神戸]と当てられるなど厳しいマッチメイクで戦績を崩したが、07年7月の岩下幸右[Gツダ]に判定勝ち、11月にも竹下寛刀[高砂]に分の良いドローと、厳しいマッチメイクで揉まれた成果が発揮されつつある。
1R。膠着気味の打撃戦。片山がボディワークとステップを使いつつ主導権をアピールするものの、明確なヒット数は伸び悩み。佐梁は手数稼ぐがこちらも決め手無し。
2R。このラウンドもクリンチ気味の揉み合いが目立つ。片山のボディフック、右ストレートが先手で当たり、優勢か。佐梁もラウンド後半にはいってヒットを返すが、こちらは如何にも軽い。
3R。このラウンドも膠着気味。ショート〜クロスレンジでジャブやショートの打ち合い。片山が僅かに見せ場作るも、佐梁はコツコツと左を当てて食い下がる。
4R。泥仕合気味に。佐梁は密着しつつ手数を粘り強く繰り出してゆく。片山も中間距離ではボディを攻めて小さな見せ場を作ったものの微妙。
5R。完全に戦線は膠着。クリンチしながら互いに手数を重ねるダルファイトに。片山が一時手数でリードするが、スタミナ切れで失速し、ラウンド終了時には互角の形勢に。
6R。観客席がシーンと静まり返るほどに盛り上がりの無い試合へ。膠着気味の展開が続く中、体格で上回る片山が僅かにリードか。佐梁も粘るが、見せ場が作れない。
7R。このラウンドも淡々とした展開が続く。余りの膠着に宮崎主審は片山にホールディングの反則減点1。佐梁も精彩を欠く動きで試合が作れぬままズルズルと不毛な時間ばかりが過ぎてゆく。
8R。ラウンド開始間もなくから両者カウンター気味にヒットを交換したが、唐突にドクターチェックに。
片山の額の腫れが酷いという名目で試合打ち切り。久々に宮崎主審お得意の「ダルファイト強制遮断」が炸裂した形。
8Rまでの採点で争われた公式判定は北村、大黒、坂本の3者いずれも78-75で佐梁を支持。駒木の採点は差をつける事が不可能な8Rを10-10で固定して「A」77-75片山優勢「B」78-78イーブン。
試合内容的には「壮絶なダルファイト」と断ぜざるを得ないメイン失格の一戦で、両者決め手無く「10-9」の振り分けが実に難しい試合。筆者周辺のリングサイダーの声も「ほぼ互角。敢えて言えば体格で上回る片山が攻勢点で微差上回ったように見えた」という意見が多かったが、公式ジャッジは片山の強引に泥仕合へ引き込む試合振りを明確に拒絶。主催ジムのメインイベンターに減点して逆地元判定という、2年前までのJBC西日本では到底考えられなかった結果となった。片山はここまでの“出世街道”で名目上の勝利と引き換えに抱えた“負債”を色々な形で返済させられているようだ。