駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第6試合・Sバンタム級8回戦/○上谷雄太[井岡](6R1分16秒負傷判定3−0)西正隼[正拳]●

上谷は6勝(2KO)無敗1分の戦績。アマ時代に高校選抜タイトルを獲得し、06年12月末にプロデビュー。中には際どい判定に持ち込まれた苦戦もあったが、わずか半年の間に4回戦を3連勝、6回戦を2連勝でA級に昇格。08年には難敵・内山淳[倉敷守安]に6回戦ながら勝利して都合6連勝。しかし6月には川野正文[大阪帝拳]の強打に苦しめられてドロー。進境が窺えつつも、A級戦線で揉まれている最中といったところか。
西は8勝(4KO)8敗3分の戦績。02年にデビューするが、新人時代は勝ったり負けたりを繰り返し、04年に出場した新人王戦でも2回戦敗退に終わっている。6回戦に上がっても連敗スタートを強いられたものの、06年から6回戦で連勝してA級昇格すると、同年7月、10月には8回戦で連勝を果たした。07年末からは本田秀伸[Gツダ]、児玉卓郎[岐阜ヨコゼキ]、ジェロッピ瑞山[千里馬神戸]と、3連続の東洋・日本ランカーに挑戦。しかし大差の判定負け2つと負傷ドローという結果で、壁にぶつかってしまった形。こちらも今回が仕切り直しの一戦だ。
1R。ミドルレンジで互いに牽制しながら断続的な打撃戦。スピード自慢の上谷に対し、西も素軽いステップを使うなど決してスピード負けしていない。打ち合いでも西が優勢。圧力攻めで攻勢点も稼いで互角以上のラウンド。
2R。上谷はスピード意識した立ち回り。攻守の際に欠かさず足を使って主導権を引き寄せる。西は打ち合い挑むが、待ち構えていた上谷の左フックを浴びて痛恨のダウン。この時のダメージは小さかったが、終了ゴング前にも続けて被弾し、そこで膝を折る大ダメージ。
3R。西はアグレッシブに攻勢も、上谷はバックステップ軽やかに捌いて主導権。西はラウンド序盤に先制したが、徐々に足を使わされて失速。強引に迫っても、上谷の運動量多い迎撃作戦の前に屈する。上谷はこのラウンドに左目上に偶然のバッティングで傷を負い、この後度々ドクターのチェックを浴びる事に。
4R。西は圧力をかけてクロスレンジから強引に攻勢狙い。上谷は右アッパークリーンヒットで追撃し、その後も足を止めず、ラウンド後半からは体力面でも勝る所を見せつけてリードを保つ。
5R。西はとにかく前進、前進。圧力かけつつのフック攻勢で上谷のスピードを封じ込める。ラウンド中盤にはヒット、有効打も連発してハッキリと優勢。上谷は連打で対抗するが、流石にここでは精度が落ちた。
6R。このラウンドも打撃戦。前進する西、ステップ使って対抗する上谷。ほぼ互角の形勢で1分経過。しかしここで3度目となる西の傷チェック。出血が酷く、ストップをかけられてしまった。
6Rまでの採点で争われた公式判定は宮崎58-55、野田58-56、大黒58-57の3−0で上谷。駒木の採点は6Rを10-10で固定し「A」58-56「B」59-56で上谷優勢。
上谷はこの日もファイター気味の好戦的なスタイルで勝負。スピード優位を活かして主導権を握り、相手に体力を空費させる作戦が当たった。2Rのノックダウンシーンでは決定力も見せ付けた。しかし5Rからは相手の圧力攻勢に屈してしまい、8Rまでこのペースでいけば危なかった。自分の傷に救われた側面もある。
西はいつも通りの圧力かけるアグレッシブな攻勢。前半の劣勢を耐え抜き、5Rから漸く逆転の糸口を探り当てたが、これからという所で試合がストップ、涙を呑んだ。頭から行くクセが相手の負傷に繋がったという事もあり、不運ばかりで片付けるのはどうか、という指摘も出来るが、惜しい試合を落としてしまったのは確か。