駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

アゼリア大正昼夜興行

連続昼夜興行の2日目は、会場をアゼリア大正に変えて若手中心興行の2連発。昼の部に森岡ジム主催の「第4回森岡栄治杯」、夜の部にグリーンツダジム主催の「Waves」がそれぞれ開催された。
これは私見だが、僕は新人王戦を除く4回戦ボーイの試合については、今回のように原則としてアゼリアなど小会場での“トライアウト”的な興行でのみ行い、そこで好パフォーマンスを見せた選手のみ、一般層向けの中規模以上興行で出場できる……という形がベストと考えている。
というのも、普段、我々ボクシングマニア層が一見客の友人・知人を試合会場に連れて来辛い大きな理由の1つとして、前座にレベルの低い試合が延々と続くから、というのがある。実際、僕自身も「つまらない試合も多かったし、もう1回は見たいと思わない」というミもフタも無い理由で、知人に2度目の来場の誘いを断られた経験もあったりする。
主催ジムの「新人を恵まれた環境で活動させてあげたい」という気持ちは理解出来るのだが、その贔屓の引き倒しによって新規ファン開拓に支障を生じさせているのでは本末転倒だ。本当にボクシング興行を世間一般のスポーツ・格闘技ファンにとって魅力あるモノにするのならば、レベルの高い試合とそうでない試合の分別は必要不可欠だと思う。興行関係者の皆さんには是非ともご一考願いたい*1
そういう意味において、かなり無理のある日程ではあるが、この日のような試みは大賛成である。ただ、試合数と総ラウンド数(第1部:10試合50R/第2部:10試合44R)は、いくらアゼリアの興行とはいえ観戦者にとっては辛いかな、という気もした。特に6・8回戦の試合はアゼリアで行うには勿体無いカードもあっただけに、そういう点も踏まえて、あと何試合か削って欲しかったというのが偽らざる本音だ。


※先に試合結果のみアップしておきます。
※駒木の手元の採点は「A」(10-9マスト)「B」(微差のRは10-10を積極的に採用)を併記します。「B」採点はラウンドマスト法の誤差を測るための試験的なものですので、(特に8回戦以上のスコアは)参考記録程度の認識でお願いします。公式ジャッジの基準は「A」と「B」の中間程度だとお考え下さい。

*1:そうは言っても地方のジムなどにとっては難しい話でしょうが……

第1部・「第4回森岡栄治杯」(森岡ジム主催)概要&雑感

第1部は、年3回程度アゼリア大正で開催されている森岡ジムの自主興行。同ジム所属選手にこだわらず広い範囲から選手を集め、全10試合のボリューム興行となった。新人王トーナメントを盛り上げた面々が一堂に集ったのはボクシングマニアにとっても嬉しいマッチメイクだったが、後述するように判定決着連発によって4時間超の“ロングラン興行”となり、第2部の開場時間にまでズレこむ結果となったのは少々残念……というか、後の興行に迷惑をかける可能性のあるタイムスケジュールを組む事自体どうかと思うが。
メインは森岡ジムの“2強”の1人である坂本将広と、漸く復調成った感のある如月紗那[六島]による“西日本新人王戦準優勝者対決”。6回戦3試合の中には前年度新人王戦ウェルター級西軍代表・細川貴之[六島]の再々起戦など、地味ながら探せば見所が多数見つかるラインナップ。このカードに興味を持てるかどうかがマニアとファンの境界線か(笑)。
客入りは指定席こそ売れ残りが目立ったものの、選手の身内・後援者が多数詰め掛けて超満員状態。ある試合などは、出場両選手のご母堂が何故か同じコーナー側の至近距離で接近遭遇し、互いを意識し合いつつ、過激な言葉を交えた熾烈な応援合戦を繰り広げる場面もあったりした(笑)。選手のお母さんが応援に来た場合、「行け!この野郎!いてまえ!」と勇ましい応援を繰り広げるタイプと、自分の息子が殴られる所を見ていられない、というタイプに分かれるのが興味深い。

第1部第1試合・Lフライ級4回戦/○田口篤[森岡](判定2−0)若原義敬[神拳阪神]●

両者戦績は田口1勝(1KO)無敗、若原1勝(0KO)無敗。田口は今年7/2にデビュー戦勝利を挙げたばかりだが、若原は04年12月以来1年10ヶ月ぶりのリング。
1R。近距離での打撃戦。若原が接近して来る所を、田口がジャブ、ワン・ツー、フック、アッパーと自在の攻めで迎撃し、ヒットの山を築く。若原もワン・ツー中心にヒット返すが、やや大振りで粗い。そしてラウンド終盤、田口は左アッパーでダウンを奪う。
2R。乱打戦。ラウンド前半は田口が精度高い連打で優勢だが、ガード低く頭の動かないディフェンスで被弾も多い。終盤には若原がワン・ツーやアッパーを決めて形勢挽回し接戦。
3R。若原はラウンド序盤にストレート、フックの右強打で有効打連発し先行。田口は中盤からジャブを鋭く当てグラつかせて攻守逆転。途中泥仕合気味の展開になるが、終盤にも田口は印象的なヒットを連発して形勢はほぼ互角まで接近。
4R。田口が足を使いつつ有効打を重ねていくが、若原が圧力かける攻勢でヒット連発し一気に逆転。だがラウンド終盤の乱打戦で田口がもう一頑張り。ヒットを4〜5発浴びせて優劣微妙。
公式判定は新井38-37、北村38-37、半田38-38の2−0で田口。駒木の採点は「A」39-36「B」40-37で田口優勢。2〜4Rはいずれも微差の範疇で、ダウンの2点差が最後まで響いた試合になった。
格闘技興行の第1試合としてはベストのフレッシュかつ激しい乱打戦。田口はケンカファイトだったデビュー戦に比べると随分ボクサーらしい戦いぶりとなり、頼もしい成長を見せてくれた。頭を振らないディフェンス故の被弾癖が気になるが、コンビネーションの精度など攻撃面で強調材料も。
若原も久々の試合にしては動きのキレは悪くなかったが、やはり1Rのダウンが痛恨。また、守備力と攻撃のバリエーションの乏しさが、優勢に出来るラウンドを互角に留めてしまった感も。

第1部第2試合・フェザー級4回戦/○松本一男[森岡](3R1分28秒TKO)佐々木健[金沢]●

松本はこの日がデビュー戦、佐々木は3/18にデビュー戦を引き分けて以来の2戦目。
1R。佐々木は金沢ジム若手らしい“ガードの低い所だけ徳山”なファイトスタイル。ガラ空きのガードで松本の左ストレートをカウンターで貰ってしまう位置に居続けて、早々に数発のクリーンヒットをもらいダウン寸前に。しかし佐々木もラウンド中盤以降に反撃し、右ストレートを数発ヒットさせて失点をいくらかカバーする。
2R。松本はデビュー戦とは思えない余裕ある試合運び。佐々木のプレスを捌きつつ左ストレート、右フック、左ボディとクリーンヒットして効かせる場面も作る。佐々木は戦意こそ高いがこれが悲しいぐらい空転している。
3R。松本はこのラウンドも余裕を持って右フック、左ストレートを次々とクリーンヒットさせ遂にノックダウン。カウント8で試合再開も、松本はすぐさま左ストレートをクリーンヒット。佐々木陣営からタオルが投入されて試合はストップ。
松本はデビュー戦らしからぬ落ち着いた戦い振りで完勝。まだ技術そのものは荒削りだが、面白い雰囲気を持った選手だ。
佐々木はディフェンスするという意識が頭から飛んでしまうようで、相手の出方に対応した試合が全く出来ていない。プロ選手として最低限身に付けねばならない技術の再確認からやり直すべき。

第1部第3試合・Sライト級4回戦/△金井龍哲[ウォズ](3R2分01秒負傷判定0−0)川人紀夫[ハラダ]△

両者戦績は金井が未勝利2敗、川人2勝(2KO)1敗1分。金井はデビュー戦の相手が今年の新人王戦Sライト級西日本覇者・千葉龍史[塚原京都]で、続く2戦目、そしてこの日も新人王戦上位進出が狙える選手とばかり対戦している。川人は6/4に新人王戦ウェルター級2回戦で丸野琢哉[守口東郷]にKO負けして以来の再起戦。
1R。ガードを固め専守防衛気味で手数乏しい金井に対し、川人がマイペースの強打攻め。決定打は無いが、ガードの隙間にアッパー、ストレートをこじ入れて強引にヒットを奪う。
2R。このラウンドも金井は不可解な程ディフェンシブな試合振りで、川人は金井の固いガードごと押していって攻勢。しかしラウンド中盤、金井はカウンター狙いが奏功して左でノックダウンし形勢逆転。泡を食ったか、ガードを上げて追撃を避ける川人だが、今度はガラ空きのボディに有効打連発。
3R。川人は強引に密着していって強いショートフック連発。金井は為す術無く守勢一方となり、更に揉み合う中でバッティングによる傷を負う。しかもこれがやがて出血が激しくなって、試合はストップ、負傷判定に持ち込まれた。
公式判定は北村、原田、新井の3者いずれも28-28のイーブン。駒木の採点も「A」「B」いずれも28-28イーブン。2Rに川人がダウンを喫するが、それ以外のラウンドで明確な優勢を築いて揺るがしようの無い判定。但し逆転の公算の高かった川人にとっては不運な裁定かも。
川人が守勢でカウンター狙いの相手に強引な攻勢を仕掛け、ダウンを喫した場面意外は優勢に試合を運んだが、不運の負傷判定に泣いた。ただ、荒っぽい攻撃やガードの拙さなどから考えると、4回戦中位級の地力水準で伸び悩んでいるようにも見える。
金井は殆どの時間で守勢に立たされ、ノックダウンのリードを守り切れなかった。今日の彼はパンチを当てる事よりも、相手からパンチを当てられない事を優先的に考えているような節が窺えた。未勝利に甘んじるような地力ではないはずなのだから、もっと高い戦意を、激しい打ち合いにでも応じる勇気を持って試合に臨んで欲しい。

第1部第4試合・ウェルター級契約ウェイト(65.0kg)4回戦/○大橋孝史[SFマキ](判定2−0)やんばる田中[六島]●

両者戦績は大橋2勝(1KO)無敗、田中1勝(0KO)2敗2分。大橋は今年3月にデビューし、7/2に2勝目を挙げた。田中は新人王戦で準決勝まで進出するも、好川大智[大阪帝拳]に完敗。今回が再起戦である。
1R。大橋はパワフルかつ豪快な強打を放つが、田中のガード固く明確なヒットは少ない。田中もやや大振り目立つが、ショートアッパーを上下に3発有効打して印象的な場面を作る。
2R。大橋が猛烈な勢いで強打、圧力で押していくが、田中のガードで9割方不発。それでも手数と攻勢点でリードするが、田中は要所要所の打ち合いで有効打を重ねて形勢微妙。
3R。大橋は右アッパーの有効打で主導権を掴むと、これを2発3発と重ねて優勢に立つ。田中もボディブロー中心に粘りこむが、大橋の手数と圧力に苦しめられて劣勢。
4R。田中はラウンド序盤にボディを効かせると、大橋は圧力任せの乱雑な攻撃となる。田中はロープを背負う展開ながらも手数では優勢。
公式判定は半田39-37、宮崎39-37、北村38-38の2−0で大橋。駒木の採点は「A」39-37「B」39-38で田中が優勢。「“アグレッシブ”&“リング・ジェネラルシップ”の大差優勢」と「“クリーンヒット”の小差以上優勢」の比較で際どい試合だったが、この日は大橋に勝ち運が巡って来た形。
大橋はパワーと圧力で豪快に攻め、ヒット数では劣勢も攻勢点で際どいラウンドを獲り切った形。これで3連勝となったが、戦績通りの実力の持ち主かと言えば……?
田中は“クリーンヒット”の要素では明確にリードしていたが、余りにも長い時間ロープを背負い過ぎたのが嫌気されたか。ドローならともかく彼にとっては少々可哀想な判定という気もする。

第1部第5試合・Sフライ級4回戦/○内田崇文[森岡](判定3−0)三浦章吾[神拳阪神]●

両者戦績は内田が未勝利1敗、三浦1勝(1KO)1敗。内田は3/18のデビュー戦以来、三浦は4/10にKOで初勝利を挙げて以来のリング。
1R。相変わらずガードの拙い三浦はボディワーク中心のディフェンスだが、相手のパンチに対応せずに動いているだけで被弾率が高い。しかし内田もやや及び腰でパンチも軽く、浅くで攻め切れない。コーナーへ詰めて攻めんとするが、三浦に逆襲の左カウンターを浴びてダウンを喫する。それでも立ち直った内田はラウンド終盤には細かくヒットを返すが、こちらもガードが甘く攻勢を維持出来ない。
2R。三浦はガードを放棄するような大胆過ぎる構えでジワジワ圧力をかけるが、自分から手を出さずにカウンター狙い。これでは相当反応が良くなければただ相手の攻撃を受けるだけで、案の定内田のワン・ツーをクリーンヒットされ、更にワン・ツーの追い撃ちやその他細かいヒットを浴びる。これに対する三浦の反撃は手数も少なく、戦果は限定的。
3R。手数無く前進する三浦に対し、内田は足を使いつつのジャブ、ワン・ツー、ショートアッパー。更にストレートが度々クリーンヒットとなり、圧倒的な形勢に。三浦は一発KOを狙い過ぎ。
4R。漸く三浦がガムシャラに手数を出してポイントを獲りに行くが、今度は大振りが目立つ。右ストレート2発にオープンブロー気味のフックを当てるが、内田はジャブとワン・ツーで主導権を確保したまま、ヒット数でも小差リード。際どいラウンドだが……
公式判定は新井、半田、野田の3者いずれも38-37で内田を支持。駒木の採点は「A」38-37内田優勢、「B」38-38イーブン。4Rの採点が勝敗を分ける事になったが、奇しくもユナニマス・デジション。
内田はやや消極的なボクシングでひ弱な印象残るが、相手の守備の甘さを巧く突いてダウンの2失点を何とか挽回した。ただしこちらも守備の拙さが目立ち、総合力的には4回戦でも並以下。
三浦はディフェンスを放棄してみたり、手数も出さずに無理のあるKO狙いなどセオリーを無視したファイトに走り過ぎた。もう少し自分の実力を客観的に見詰め直して練習、試合に臨むべきだ。

第1部第6試合・ミニマム級4回戦/△山口鋭二[森岡](判定1−0)浜口直哉[金沢]△

両者戦績は山口2勝(1KO)1敗、濱口1勝(1KO)無敗。山口は今年Lフライ級で新人王戦にエントリーするも緒戦で敗退。濱口は3/18にデビュー戦をKOで飾って以来のリング。
1R。アグレッシブな両者による打撃戦。共に手数豊富も。濱口はガードを固めてプレスをかけ、山口の攻撃を捌きつつ自分から連打を畳み掛け、強打で山口をグラつかせる。
2R。激しい打ち合いにカウンター合戦。互いにミニマム級とは思えない迫力の強打を飛び交わせるリスキーな展開。山口は先手を打って右ストレートにアッパーを打ち込みヒット数を稼ぐ。濱口もフック、ストレートを返すが後手に回って印象が悪いか。
3R。このラウンドも打ち合いに終始。ラウンド中盤までは山口の右ストレートが先手、先手で決まってヒット数先行も、次第に濱口の圧力をかけつつの右ストレートを決まり始めて形勢は混沌。山口はリードを守りたかったが、濱口は終盤まで攻勢をキープして粘りこんだ。
4R。両者クリンチや大振りが目立つようになったが、気合の入った乱打戦。一進一退の攻防が続いたが、ラウンド後半になって山口が右アッパーを効かせてヤマを作った。濱口もヒット数では互角に粘るが……
公式判定は新井39-37(山口支持)、宮崎38-38、原田38-38の1−0ドロー。駒木の採点は「A」39-37「B」39-38で山口優勢。微差のラウンドも1〜2あり、ドロー近辺ならどんな採点結果があってもおかしくない接戦。マジョリティ・ドローは収まるところに収まった感。
ミニマム級らしからぬ迫力ある熱戦。山口は先手で仕掛けた右ストレートにステップワークで主導権支配をアピールしたが、濱口の圧力に押され気味となってドローに粘られた。
濱口はアグレッシブさを前面に出し、手数と攻勢点では優勢。しかしカウンター合戦や打ち合いでは終始劣勢で、ドローに持ち込むのがやっと。パンチの軌道にやや無駄があるようなので、これを早く修正しておきたい。

第1部第7試合・Sフライ級契約ウェイト(51.8kg)6回戦/●森島隆司[SFマキ](判定0−3)橋本泰治[尼崎]○

ここからは6回戦。両者戦績は森島3勝(1KO)7敗2分、橋本5勝(1KO)1敗3分。森島は負けが込んだ戦績ながら、これまでの対戦相手は久高寛之[Gツダ]、奈須勇樹[Gツダ]、本田猛[尼崎]、松下泰士[ヨシヤマ]と、後にA級でも活躍中の選手がズラリと並ぶ。地力的には4回戦でも上位クラスで、今回は初の6回戦だが格負け感は無い。橋本は今年の新人王戦でフライ級準決勝まで進出するも、相性の差もあって完敗。今回は6回戦での再起となる。
1R。橋本がアグレッシブにジャブからストレート、フックと連打浴びせる手数攻め。森島のガードも固く、フック、アッパー中心に手数を返す場面もあったが守勢気味。全体的に観れば橋本の攻勢とジェネラルシップが目立つ。
2R。橋本の手数攻めが続く。森島も手数増やして奮闘も、その分守備が疎かになってジャブやフックを被弾。橋本の動きはやや大きいが、手数、ヒット数、主導権支配と多くの要素で優勢。
3R。このラウンドも橋本の手数攻勢が激しい。ジャブを森島のガードの間を割って連続ヒットさせるなど優勢明らか。森島は攻撃が場当たり的になってしまい苦しい。
4R。橋本主導のラウンドが続く。ダッキングを上手く使って自分のペースを離さない。攻守両面で優位に立ち、細かいヒットを多数浴びせる。森島も手数を出して反撃するが、ただ単に手を出しているだけ、という感じ。
5R。橋本の主導権は揺るがないが、このラウンドは淡々と流れて凡戦ムード。戦う二人の必死さは伝わるが……。形勢そのものは、手数と細かいヒット数で上回る橋本有利。
6R。橋本はラウンド序盤から手数を増やしてスタミナ豊富な所もアピール。相変わらずフックがオープンブローで決め手に欠けるが、森島を根負け状態に追い込んで堂々たるポイントアウト。
公式判定は北村60-54、野田60-55、原田59-55の3−0で橋本。駒木の採点は「A」「B」いずれも60-54で橋本。
橋本が6ラウンドに渡って休まず手数を出し続けて完勝。一度も主導権を手放さず、スタミナ豊富な所も見せつけた。ただ、オープンブロー癖は早く直さないと、このままでは8回戦に上がった時に頭打ちとなるだろう。
森島は全く自分のボクシングをさせてもらえず。相手との相性の悪さも目立ち、今日は攻撃も苦し紛れのものに終始した。

第1部第8試合・ウェルター級6回戦/○丸野琢哉[守口東郷](判定2−0)細川貴之[六島]●

両者戦績は丸野5勝(3KO)4敗、細川9勝(2KO)5敗。丸野は今年の新人王戦の準決勝でTKO負けを喫して以来の再起戦。細川は前年度新人王戦のウェルター級西軍代表だが、全日本決勝で牛若丸あきべぇ[協栄]に敗れ、今年5月の再起戦でも判定負けを喫して連敗中。9勝しているが、全て4回戦での勝利で6回戦はまだ未勝利。今回はまたも苦手のサウスポー相手だが……?
1R。ヒット&アウェイの打撃戦。細川はサウスポー相手でリズムが掴めず、持ち前のディフェンシブな戦い方が出来ないが、それでもキレの良いジャブと回転力豊かな連打でヒット数優勢。丸野はストレート中心の攻撃で押したいが、打ち合いでは地力の差を見せ付けられて劣勢。
2R。細川はこのラウンドもハンドスピードや精度の差でジャブ、ストレート、アッパーを立て続けにヒットさせて一方的な展開に持ち込むが、ラウンド終盤になって好事魔多し。丸野の左ストレートがカウンターでクリーンヒットする事2回、その度に細川は完璧なダウンを奪われてしまう。深刻なダメージは無く、時間的な恵まれも有ってラウンド終了まで何とか凌いだが、このラウンドは10-7の採点となる。
3R。丸野はラウンド前半、ジャブ中心にヒット重ねてストレートで追加弾。しかし細川も後半に入ってストレート中心に有効打を重ねて丸野をグラつかせ、ほぼ互角の形勢に持ち込む。
4R。細川は足を使いつつ、ハンドスピードの差を活かしてジャブ中心の攻撃。そこへ右、左とフックを、更に左ストレートで大差リードを確保。丸野も右ジャブ数発ヒットさせるが、ストレートまで繋げられず劣勢。
5R。細川がスピード差活かして主導権。細かいヒットの数では圧倒するが、丸野は少ないチャンスの中で右フックをクリーンヒットさせ、更に左ストレートで一瞬細川の膝を折らせる場面があって形勢微妙。
6R。細川がアウトボクシングで手数と主導権で優勢。細かいヒットに左フックのクリーンヒットで効かせるが、丸野も右ジャブで機先を制して左ストレート有効打。あとは丸野が圧力をかけていった分の攻勢点をジャッジがどう見るか。
公式判定は半田57-55、原田57-56、野田56-56の2−0で丸野。駒木の採点は「A」57-55細川優勢、「B」57-57イーブン。細川は2Rに2回のダウンで、このRは10-7丸野。あとのラウンドは細川が概ね優勢だったが、恐らくは形勢微妙だった3Rと5Rで丸野の攻勢点が高く評価されて際どく逆転となった形。それにしてもこの日は“アグレッシブ”要素の重視が目立つ採点方針だ。
丸野は技術では劣勢だったが、要所でヒットを浴びせるなど粘り強く戦い抜いて辛勝。2Rの3点リードを何とか守り切った。
細川は手数、ヒット数、そして主導権支配では概ね優勢だったが、山場を作る決定的なクリーンヒットを奪えず、肝心な所でポイントを獲り損ねた。それにしても2Rのダウン2回が痛い。6回戦での3点ビハインドは、やはり致命的だ。

第1部第9試合・フライ級6回戦/△山口淳一[森岡](判定1−0)鈴木遼[尼崎]△

両者戦績は山口5勝(1KO)2敗2分、鈴木4勝(0KO)2敗1分。山口は5/4の森岡ジム興行で引き分けて以来のリング。鈴木は新人王戦Lフライ級西日本準決勝で敗れて以来の再起戦。
1R。山口は鈴木の攻勢をガード、ダッキング、クリンチとあらゆる手段を使って完全に捌ききり、逆にジャブ、ストレートで迎撃してヒット数を稼ぐ。自ら攻勢に出る場面もあって、このラウンドは“クリーンヒット”要素で優勢、他の要素では互角。
2R。山口はこのラウンドも、鈴木の攻勢に対してジャブ、ストレートでカウンター気味に対処する。しかし鈴木もこのラウンドは細かいジャブにフック有効打、更にラウンド終盤には手数こそ物足りないがロープへ詰めての攻勢でジャッジにアピールして小差まで挽回。
3R。クリンチ多い展開の中、断続的な打撃戦でヒットを交換する。鈴木はやはりプレスをかけつつジャブ、ストレートの攻めで先制のヒット、有効打。だが山口もラウンド終盤にはフック連打で有効打を奪って差を詰める。
4R。このラウンドも密着しつつ膠着気味の展開。山口が右ストレートで先制攻撃を決めるが、鈴木もストレートに左カウンターのクリーンヒットで効かせて印象度では互角以上。
5R。密着してのショート連打合戦。共に狙い撃ちより手数を出す事を優先したために明確なヒットには恵まれないが、山口が細かいヒットと手数、鈴木が圧力かけつつの手数攻めで互角〜微差の形勢。
6R。このラウンドも膠着気味。クリンチ状態での手数の打ち合いで、差の無い接戦。手数や主導権支配では僅かに山口が優勢だが、このラウンドも極めて際どい。
公式判定は宮崎58-56(山口支持)、北村57-57、半田57-57のマジョリティ・ドロー。駒木の採点は「A」58-56山口優勢「B」58-58イーブン。終盤5〜6Rが特に際どい形勢で、これまたドロー近辺ならどの裁定でも勝負の綾で片付けられてしまう内容。ドローは絶妙な落とし所と言えるだろう。
軽量級らしい手数合戦に終始。山口は1Rこそ好守とカウンターで技術面の優勢をアピールしたが、その後は密着戦にお付き合いしてしまい、ドローに甘んじた。6回戦では自分の持ち味、自分のペースを守り、活かしきる努力を怠らないで欲しい。
鈴木もアグレッシブな攻勢で健闘したが、クリンチ状態で膠着してはなかなか形勢で差をつけられない。彼もまた持ち前のステップワークを使わず終いで、理想的な試合運びが出来たとは決して言えない。

第1部第10試合ウェルター級8回戦/○坂本将広[森岡](判定2−0)如月紗那[六島]●

メインは西日本新人王戦の準優勝者対決。
05年度Sライト級の西日本準優勝者・坂本は6勝(2KO)1敗3分。試合の中で対戦相手の攻略法を見出してゆくという典型的な後半逆転型の選手だが、前回7/2の試合では久々のKO勝ちを果たした。
対する如月は04年度ウェルター級の西日本準優勝者。6回戦では苦労した時期もあったが、最近は漸く名目上の地位に実力が追いついて来た感があり、今年は2月と5月に連勝してA級昇格を果たしている。
1R。試合開始から暫くは、A級らしくフェイントを多用しつつの様子見モード。ラウンド後半からは、如月が強いプレッシャーを掛けつつ放つラフなワン・ツー、フック連打が決まり、小差ながらリード。坂本も基本に忠実なコンビネーションを見せるが、これは如月にガードされた。
2R。ショートレンジの打撃戦。坂本のコンビネーションは終始ガードで阻まれ、ボディ狙いもブロッキングされた。逆に如月は坂本のブロックの裏をかくフックとアッパーで有効打。更に最終盤にはワン・ツー連打が決まって坂本はダウン寸前に追い込まれる。
3R。このラウンドも打撃戦。坂本の攻勢の合間を突いて如月のストレート、フックがビシビシ決まる。坂本の手数は、やはり大半がガードの上。ラウンド終盤には如月は更に連打を追加してダメ押し。
4R。このラウンドは序盤から坂本がショートアッパーを捻じ込み、フックをガードの上でも構わず強烈に浴びせていく。如月もラウンド中盤に連打を決めるが、今度は坂本がブロックしてこれを封殺。全体的に観て坂本の手数攻勢が目立ったラウンド。
5R。坂本はショートアッパーとボディフックが機能して主導権掌握。如月も左右のフック連打で坂本をグラつかせるが、坂本はそこから再び攻勢に出て手数・ヒット数共に小差ながら優勢を築く。
6R。坂本はこのラウンドも手数豊富にショートアッパー、ボディブロー、ジャブ連打で手数・ヒット数有利。しかし如月もショートフック、右ストレートを鋭くクリーンヒットさせて効かせる場面も。互角〜微差の接戦。
7R。ラウンド序盤は如月が攻勢に出てショートフック有効打も、坂本の粘り強い手数攻めが次第に支配的となり形勢逆転。如月も再逆転狙って終盤に手数振り回すも届かず。
8R。如月がラウンド序盤、左フックを立て続けにスマッシュさせるが、中盤以降は決め手無く互いにガード上へ手数を浴びせる内容に。坂本はラウンド後半に有効打2発で追いすがるが、優劣微妙に。
公式判定は宮崎78-75、野田77-75、原田76-76の2−0で坂本。駒木の採点は「A」76-76イーブン、「B」77-76如月優勢。坂本を支持したジャッジの採点は、際どいラウンドが全部坂本に流れたようなスコア。“森岡イズム”とも称すべきド根性ファイトにジャッジも感服させられたといったところか。
ド根性ファイター・坂本が4Rから手数、手数で粘りに粘って、序盤の劣勢を挽回して小差判定勝ちを勝ち取った。地力的に言ってランカー級とは差がある印象だが、それでもA級選手としての仕事は立派に全うしている。
如月も3Rまでは着実にポイントを重ねて優勢。中盤戦以降も手数、ヒット数で絶えず肉薄していたが、相手の粘りに根負けして主導権争いに競り負けるラウンドが多くなっていった。それでも流石に負けまでは……という内容にまとめていたのだが、結果的にジャッジが味方してくれなかった形。

第1部総括

全10試合中9試合が判定、しかも際どい内容も多く「観てて疲れた」というのが第一感(苦笑)。それでも「往年の新日本プロレスの第1試合」的内容だった田口×若原戦など、技術よりも気持ちで客席を沸かせる試合も多く、全体的に見れば若手中心興行の良い所の方が目立った興行になったのではないか。これなら選手に誘われてチケットを買った人たちからも「またチケット買うから呼んで」と言ってもらえるだろう。

第2部・“Waves vol.1”(グリーンツダジム主催)

夜の部は昨夜に続いてGツダジム主催の興行だが、今日は趣をガラっと変えて若手選手同士の試合ばかり10カード。メイン格には新人王戦上位組を中心にした6回戦2試合が設定された。会場には、昨夜激闘を繰り広げた久高寛之らツダ勢やフィリピン選抜軍の姿もあり、第1部と同程度の観衆で埋まった客席は、この規模の興行とは思えない華やかな光景となっていた。
なお、この興行は、会場所在地の大正区を地元とするJBC新加盟の仲里ATSUMIジムが、初めて所属プロ選手をリングに送り出す晴れの“デビュー戦”でもあった。後述するように、この日の出場選手は勝ち星に恵まれなかったが、近い将来このアゼリアを出発点に、やがて後楽園や日本武道館に勇躍進撃する逸材が現れる事を祈りたい。

第2部第1試合・バンタム級4回戦/●棚橋直樹[Gツダ](4R1分44秒TKO)公文裕一[大阪帝拳]○

第1試合は両者デビュー戦のフレッシュな顔合わせ。
1R。いかにもデビュー戦らしい、気負いが感じられるガチャガチャとした乱打戦。共に距離を詰め過ぎの印象。その中で公文が左ジャブ、右ストレートをカウンター気味に再三有効打させ、更にはフックも追加。棚橋は手数振るうも公文のガードに阻まれてヒット数僅少。
2R。両者スピーディに動きつつ、ジャブ、ワン・ツー中心の打撃戦。棚橋、このラウンドはジャブを先手でヒットさせて主導権を握り、公文の逆襲も際どく捌いて小差リード。
3R。中間距離からカウンター合戦のようなジャブ、ストレートの打ち合い。公文がヒット重ねて数的に優勢。ラウンド終盤には棚橋を効かせてコーナーに詰めるも、体から突っ込んでしまうような不器用なアタックで決まらず。
4R。公文はこのラウンドもストレート、ジャブの打ち合いで優勢に立ち、プレスをかけて圧倒的な形勢へ。しかしこの攻勢がまたしても気持ちが乗り過ぎてタックルのような形になってしまい、棚橋を押し倒してしまう。これはスリップダウンだが、半田レフェリーは大勢決したとの判断で試合をストップ。棚橋陣営はこの裁定に強く抗議するが、勿論覆らず。確かにタイミング的には最悪の止め方だが、このまま試合を続行していても勝敗が逆転する事は無かっただろう。
さて、試合はグリーンボーイのデビュー戦らしい、気合の入った試合。公文は恵まれた筋肉隆々の体で、いかにもフィジカルの強さを感じさせてくれるが、ジャブ・ストレート以外のパンチは開発途上で、技術水準はまだまだ。
棚橋は最後の場面こそ不運だったが、内容的には完敗。有効打を貰う度に頭がハネ上がるのは如何にも印象が悪く、もう少しアゴを引くなり首を鍛えるなり、色々な鍛錬を施す余地が有りそうだ。

第2部第2試合・フェザー級4回戦/●垣見悟志[Gツダ](3R2分58秒TKO)木原和正[ウォズ]○

両者戦績は、垣見が未勝利1敗、木原は1勝(0KO)無敗。垣見は7/22のデビュー戦で判定負け、木原は昨年12月のデビュー戦勝利後、新人王戦にエントリーしていたが開幕前に棄権してしまっていた。
1R。木原は、垣見のワン・ツー中心の攻勢を無難に捌いてジャブやストレートを浴びせてヒット数小差優勢。主導権も握ってこのラウンドは手堅くリード。
2R。垣見は機先を制して左ストレートを2発、3発と有効打するが、木原は圧力をかけつつ、一気の攻勢へ出るチャンスを窺う構え。大振り気味ながらジャブ、ストレートで打って出てリカバーする。
3R。垣見はこのラウンドも左ストレートで先制も、木原もすぐ右ストレートを返して主導権奪うと、回転力とパンチ力に任せた粗い手数攻勢で次第に圧倒してゆく。やがて形勢は一方的となり、TKO裁定を勝ち取った。
木原は回転力とパンチ力に非凡なセンスを窺わせるが、今日は大振りな上にガードが低め。ブランクの影響がどこまであったかは不明だが、新人王戦に出るような選手と当たった時にはリスクが高いファイトスタイルだろう。
垣見はワン・ツーを打った後に前ノメリになる悪癖があり、3連打以上のコンビネーションに繋げられない傾向がある。また、ストレートをクリーンヒットさせた後の詰めの甘さや、平凡な手足のスピードなど懸念材料は多い。問題を1つずつ解消させていって初勝利を目指して欲しい。

第2部第3試合・Sライト級4回戦/○田村淳[塚原京都](2R1分19秒KO)松本泰知[仲里ATSUMI]●

この試合は両者デビュー戦。
1R。松本がアグレッシブに荒っぽい攻勢に出て手数で圧倒。田村はガード固めるばかりで自分の攻めに移行できない。ラウンド終盤になって漸く田村が攻勢に出るが、これに松本は右ストレート2発をクリーンヒットさせて逆に山場を作った。
2R。両者無駄の多い動きでの乱打戦。気持ちと気持ちでドツき合うような試合で一進一退の攻防が展開されたが、田村はコーナーに詰めて相手の動きを止めると、このチャンスを逃さず強打を放って一撃で沈めた。松本は立ち上がるが、4回戦の試合では止められるような効き方で10カウント。
両者とも無駄の多いムーヴで技術も感じさせないが、気持ちの入った乱打戦で凡戦にはならなかった。ただしディフェンスの甘い乱れ打ちは1勝クラス以上では通用しない。敗れた松本は勿論、勝った田村も更なる精進が望まれる。

第2部第4試合・Sフライ級契約ウェイト(51.5kg)4回戦/△前川和範[Gツダ](2R1分07秒負傷ドロー)小林歩[明石]△

前川はこの試合がデビュー戦、小林は1勝(1KO)1敗1分。小林は一部で有力候補と期待された今年の新人王戦で、後の西日本覇者・松元雄大[エディ]に初戦敗退の不覚。今回は5ヵ月開けての再起戦となる。
1R。ショートレンジの乱打戦。攻守の技術で大きく勝る小林の圧倒的優勢で、細かいヒットを重ねた上に左ストレートをクリーンヒットして山場も。前川は手数を出すもディフェンス巧者の小林に捌かれて苦戦。
2R。前川は先手で仕掛けてゆくが、小林は回転力豊かなコンビネーションですぐさま逆転。前川のヒットはボディブローなど散発的で、小林の細かい手数が数的優勢を作り出す。しかし前川がこのラウンドで負った負傷が殊の外重く、ドクターストップで試合終了となってしまった。試合前半でのストップのため、負傷ドローの裁定に。普通、形勢が明らかな場合は3R冒頭まで保たせて負傷判定に持っていくのだが、相当深い傷だったのだろうか。
小林が地力の差で圧倒する展開だったが、不運のテクニカルドロー。ルールはルールだが、それにしても可哀想。前川は果敢に戦ったが、正直に言って今日の相手とはミスマッチ。よく2R途中まで保った事を褒めてあげたいぐらいの実力差があった。

第2部第5試合・フェザー級4回戦/△奥健太郎[奈良六島](1R2分12秒負傷ドロー)石角悠起[大阪帝拳]△

両者戦績は奥1勝(0KO)2敗1分、石角はこの日がデビュー戦。奥は5月、7月と短いスパンで試合を重ねて、これが今年3戦目。
1R。ガチャガチャした打撃戦。奥が石角の攻勢を捌きつつ反撃し、不用意に接近して来る石角に右ストレートを2発有効打。奥が優勢を確保しようとしていたが、2分過ぎに偶然のバッティングで負傷し、これで試合終了になってしまった。何と2試合連続の負傷ドロー。
試合が成立する以前の段階でストップされてしまったので、選手の実力査定は差し控える。ただ、石角はもう少し慎重な試合運びを覚えないと、今後サウスポーゆえの打たれ脆さに苦しめられそうだ。

第2部第6試合・Lフライ級4回戦/○松村健佑[Gツダ](2R2分46秒TKO)小金丸憲友[進光]●

両者戦績は、松村が未勝利2敗1分、小金丸はこれがデビュー戦。松村は7月に東京遠征し、聖地・後楽園ホールでの試合を経験するも敗れてしまった。
1R。松村は先手必勝とばかりに小金丸をロープに詰めて強打攻勢も、小金丸も松村のガードの隙を突いて2発有効打をお返し。その後の展開は、松村の乱暴な攻勢が目立つが、共に不発気味で消化不良の内容に。
2R。互いに“ボクシング”の技術に欠け、パンチの当たる距離へ踏み込んで手を出し、当たったら追い討ちをかける……という行き当たりばったり感否めぬ展開。小金丸も見せ場を作るシーンがあったが、最後は松村が連打で勢いよくクリーンヒットを連発し、レフェリーストップを勝ち取った。
松村は攻守の技術不足をアグレッシブさでフォローするような戦い振り。今日はこの積極的姿勢が功を奏したが、ガードの甘い分だけ被弾が目立ち、ピンチに陥る事も。初勝利はめでたいが、並クラス以上の相手とは苦戦を強いられそうだ。
小金丸は動きがぎこちなく、パンチのバリエーションもまだまだ少ない。とりあえず手を出す事で精一杯の状態で、現状は相手に恵まれて1勝出来るかどうかのレベル。

第2部第7試合・Sライト級契約ウェイト(62.5kg)4回戦/○百田諭志[大阪帝拳](2R1分57秒KO)塚本隆太[明石]●

両者戦績は百田2勝(1KO)2敗、塚本1勝(0KO)3敗。百田は新人王戦(Sフェザー級)で強豪揃いのブロックに放り込まれて緒戦敗退となるも、既に7/22で再起戦を飾っている。塚本も新人王戦に出場したが、こちらは不戦勝2つで準決勝へ進んだものの越崎泰広[尼崎亀谷]に跳ね返された。
1R。百田は序盤からキラーの左右フックを次々と打ち込んで有効打連発。塚本も良く踏ん張り、ラウンド中盤には不発気味ながらワン・ツーで抵抗したが、形勢は大差。
2R。百田はこのラウンドも嵐のようなフック攻勢。ラウンド序盤、膠着気味の展開で塚本もボディフックなどを決めていたが、やがて百田が次々とクリーンヒットを浴びせていって遂にノックダウン。塚本意地を見せて立ち上がるが、百田はすぐさま猛攻をかけてレフェリーストップ。ダメージ大差とあってKO裁定に。
百田が格の差を見せ付けてフック一本で圧勝。ストレートやアッパーも交えた猛攻は、4回戦の中では風格すら窺える。これでまだ3勝目、来年の新人王戦出場資格も残しており、動向が注目される。
敗れた塚本もハンドスピードは負け越しの1勝選手のものではなく、所々で強硬に抵抗する場面も作ったが、相手のペースに飲み込まれて最後は圧倒されてしまった。

第2部第8試合・Sウェルター級4回戦/○宮地慶一[Gツダ](3R0分52秒KO)藤原直人[仲里ATSUMI]●

この試合は両者デビュー戦。
1R。スピード感に乏しい打撃戦。藤原が圧力かけて強打振るい攻勢仕掛けるがガード甘く、宮地のジャブを度々浴びてしまう。それでも藤原はラウンド終了直前に更なる攻勢を仕掛けてポイントを確保する。
2R。藤原が強打攻勢で、こちらもガードの甘い宮地にクリーンヒットを連発して圧倒。宮地もマウスピースを吐きながらも抵抗し、やはり守備の拙い藤原へ立ち向かうが勢いが弱弱しい。その後は藤原が再度攻勢に転じてKO寸前の場面もあった。
3R。藤原がこのラウンドも攻勢に出てロープに詰めて猛烈な攻撃を展開するが、ディフェンスへの意識が薄くなりガードが下がったところへ宮地の右ストレートが炸裂! これが大逆転のワンパンチKOとなって、藤原はリング上で昏倒。ボクシングの怖さを再確認させられた衝撃的シーン。
この階級の両者デビュー戦とはいえ、2人とも地力不足が目立つ内容に。藤原がパワーと回転力で押して優勢に立ったが、ガードの低さとブロッキング技術の未熟さが災いして逆転KO負けを喫した。今後の課題はとにかくディフェンスの強化と、それに合わせた攻撃パターンの再構成。
宮地は勝つには勝ったが、身体能力や技術全般はプロボクサーとして最低水準。この勝利に奢らず、次は逆転ではない勝ち方が出来るよう、地力強化に努めてもらいたい。

第2部第9試合・Sバンタム級6回戦/○馬野晃[ハラダ](4R1分30秒TKO)内村翔也[金沢]●

両者戦績は馬野4勝(2KO)1敗、内村5勝(2KO)2敗1分。共に新人王戦敗退後の再起戦。馬野はバンタム級準決勝で微妙な判定に泣き、内村はSバンタム級の2回戦で西日本覇者の木村友紀[明石]に敗れた。
1R。ロングレンジからジャブで牽制し合う静かな立ち上がり。ヒット数はロースコアだが、アウトボクシングでは内村が一日の長。スピードと距離コントロールで主導権争いを優位に進め、ジャブ、ストレート1発当てて小差リードを確保か。
2R。馬野が圧力を増して攻勢を仕掛けるが、手数が少なくフックも狙い過ぎで大振りのため、明確なヒットはジャブ2発のみ。内村はアウトボックスとクリンチワークで(調子の悪い時の)徳山昌守風の試合運びを見せるが、こちらもヒットに恵まれず微妙な内容。
3R。馬野のラッシングと内村のアウトボクシングの凌ぎ合い。共に不発気味ながらパンチを合わせて拮抗した展開となるが、ラウンド終盤に試合が動く。馬野が右ストレート、内村がワン・ツー連打で有効打を交換した後、馬野が内村にロープを背負わせた所で左フックを浴びせて1発でノックダウン。
4R。内村は前ラウンドのダウンでダメージが残ったか守勢。カウンター気味に手数を浴びせるが、馬野のガードに封じられる。馬野はジワジワとプレッシャーを掛けてゆき、コーナーに詰めての強打狙い。ヒット、有効打を順調に重ねて最後はまたもフックでクリーンヒット。内村は倒れず踏ん張ったが既に敗色濃厚、遂にレフェリーはTKOを宣告した。
馬野がアウトボクサー相手に進境の跡が窺える快勝劇。攻防一体の試合運びで勝機を窺い、それが訪れるや強打攻めでダメージを与え、効かせておいてトドメを刺す……という理に適ったパンチ力の活かし方だった。
内村は6回戦に上がって相手強化、いよいよ中途半端な徳山昌守型ファイトでは通用しなくなって来た。アウトボクシングを追求するなら、まずはジャブを増やし、それから低いガードばかりが目立つディフェンスの強化が急務。今後の数試合が現役生活の行く末を決める正念場になるだろう。

第2部第10試合・フライ級6回戦/○久田哲也[ハラダ](判定2−0)堀江純平[大阪帝拳]●

両者戦績は久田5勝(3KO)3敗、堀江4勝(1KO)3敗。久田は昨年末から苦戦を凌いで連勝して来たが、7/28に判定負け。改めてA級昇格を狙う。堀江は7/22に4勝目を挙げてC級を卒業し、これが初のB級6回戦。
1R。中間距離で両者正攻法でのせめぎ合い。久田がボディアッパーで先制のヒットを奪うが、堀江はハンドスピードあるジャブで久田のガードを割って逆襲、ラウンド終盤にはショートアッパーも見舞う。久田はそれでもボディブロー、顔面への右ストレートをヒットさせて小差まで持ち込む。
2R。やや距離が詰まって打撃戦へ。久田は上下へショートフック、堀江はジャブ、ショートアッパーで互角の攻防戦。ラウンド終了直前、堀江が連打で畳み掛けて小さな山場を作ったが。
3R。久田がやや押し気味にボディ中心の攻め。変則的なコンビネーション(いわゆるツー・ワン)で有効打を追加。堀江はガードを固め、ショートアッパーでこすっからい攻め。手数はやや劣勢だが、印象的な場面も作った。
4R。互いにガードを固めてショートレンジの打撃戦。堀江がアッパーを有効打すれば、久田もストレートやボディ連打で応戦して互角。手数をまとめる久田の姿が印象的だが……
5R。このラウンドも打撃戦。久田がボディに強いストレートをヒットさせるが、堀江のジャブや連打のヒットが目立つ。久田は手数攻めを明確なヒットに繋げたい。
6R。久田がプレスをかけてガムシャラに手数攻め。右ストレートを効かせておいて、ボディに手数の山。堀江も踏ん張って細かく連打を立て続けにヒットさせて肉薄し、ラウンド後半も一進一退で互角にまとめたが、ラウンド全体を俯瞰すれば久田が小差逃げ切りか。
公式判定は半田58-57、北村58-57、宮崎57-57の2−0で久田。駒木の採点は「A」57-57「B」58-58でいずれもイーブン。小差〜微差のラウンドが多数の大接戦となったが、久田がボディに的を絞った手数攻めで際どくポイントを奪ったか。
久田が相手の固いガードと早く細かいジャブ、アッパーに大苦戦するも、相手がボディのディフェンスが甘いと見るや距離を詰めてショートボディの連打で手数を稼いで劣勢を挽回し、要所で右ストレートの有効打も重ねて僅差のマジョリティ・デジション。
堀江は攻守手堅く互角以上に戦ったが、ラウンドの行方を決定付けるような強打が泣く、惜しい星を落とした。但し実力そのものは6回戦でも通用するはず(事実、この3週間後にB級初勝利を飾った)。
なお、このカードは11/17に再戦が予定されている。堀江は10/9→10/29→11/17という超ハードスケジュールになるが、中には1年単位で試合枯れする選手もいる事を思えば、ある意味プロボクサー冥利に尽きる“好況”だろう。

第2部総括

最終試合を除いた9試合がKO・TKOまたは負傷ドローという派手な決着が相次いだ興行。昼の部とは対照的に2時間余りで興行が終了した。ナイスフォローというか何というか(笑)。
特筆すべきは6回戦のハラダ勢の奮闘と第7試合の百田の好パフォーマンス。特に百田は来年度の新人王に再挑戦するなら、今年以上に面白い存在となるだろう。